十二月 介抱
ここから先は外伝となります。前章で完結した本編とは全く展開が異なり、今までのメンバーの登場が少なくなります。また、元々少ない恋愛(?)要素もさらに薄まります。それでもよろしければ、このままお進みください。
如月家の養子発表と友人である二人からの突然の告白という大イベントが終わって数日、気持ちの整理はまだついていないものの、冬休みが近づきボクの周囲も少しずつ平穏が戻ってきた。
そんなある日のこと、生徒会室で昼休みの如月さんからの一言により、またもや事件が起こった。
「え? パーティーにまたボクが出席? でも…」
「ええ、如月の父母には私からしっかり伝えたんだけど、今回だけは相手が相手だから、どうにも断りきれなかったみたい。私の責任よ。ごめんなさいね」
謝罪の言葉と共に、麗華さんが深々と頭を下げるが、やはり友達に頭を下げさせるのはいい気分ではない。
ボクは慌てて謝らなくてもいいから! と伝えると、隣の席でイチゴミルクのパックをストローで吸いながら、一緒に聞いていた美咲さんが助け舟を出してくれた。
「謝罪は一旦置いといて、その相手って何処の誰なの? 如月会長でも断れないなら、私たちは庶民は黙って従うしかないし、そこまで気にしないでいいよ」
「へえ…如月グループが、容易には断れない相手か。とんでもない奴が出てきたもんだな」
「そうですね。少なくとも国内には他の月以外存在しないし、そんな情報も入って来ていません。とすると…」
いつの間にか葉月君と神無月君が近くの空いている席に移動しており、会話に加わっている。
二人がボクに告白してから、お互いの関係がギクシャクすると思っていたものの、こちらを気遣ってくれているのか、それともあまりにも積極的だとボクが引いてしまうと思っているのか、今までと違い多少の好意は意識してるとはいえ、幸いなことに関係は上手くいっている。
ボクがそんなことを考えていると、お弁当を食べていた生徒会長が一旦箸を置き、ペットボトルのお茶を一口飲み、同じく会話に参加してくる。
「相手は某国の大企業だ。如月だけでなく、他の月のグループとの関係も良好だ。断りきれないのも無理はない。今回は、ただ単純に綾小路の存在が気になり、直接確認したかったらしい。それに対する裏はない。安心していい」
それで話は終わりだとばかりに、お茶をもう一口飲み、生徒会長は大きく息を吐く。婚約者の情報を聞いて嬉しそうに頷きながら、麗華さんが会話のバトンを受け取る。
「そういうことなの。参加者は前回のサプライズパーティーよりも、かなり小規模なものよ。この中では、私と幸子ちゃん以外は参加出来ないぐらいにはね」
「そっ…そんな! わたくしは参加出来ませんの!?」
今回も一緒に参加するつもりだった花園さんが、一瞬で絶望して机に突っ伏す。
ボクもてっきり、また皆と一緒かなと考えており、予想が裏切られて心の中ではびっくりしたものの、目の前で大いに取り乱す花園さんを見て、逆に冷静になれた。
「ああうん、大体わかりました。それで、パーティーはいつなんですか?」
「二日後よ」
「二日後」
麗華さんが告げた期日があまりにも急だったために、ボクは著しく知能が低下し、間抜けにも口をあんぐりと開けたまま、オウムのように言われた言葉をそのまま繰り返してしまった。
周囲を見ると他のメンバーも生徒会長と麗華さん以外は、大なり小なり皆ボクと同じように驚いた顔をしている。
そして硬直したボクたちを動かすべく、睦月生徒会長が会話の締めを告げる。
「ともかくだ。大々的なパーティーならこれ程急な予定は不可能だが、今回は本当に少人数だからこそ、ここまで早く開催出来たんだ。少なくとも前回よりかは、綾小路も気が楽だと思うぞ」
正直お金持ちのパーティーには、料理が美味しい以外に何の楽しみも見出だせないボクは、頭の中で二日後…二日後…と繰り返しながら、無表情のまま専属家政婦の加藤さんが、愛情込めて作ってくれたお弁当を、黙々と食べるのだった。
二日後、ボクは麗華さんとその家族に連れられて、予定通りパーティー会場に到着した。
それぞれ美しいドレスや紳士服で着飾ったお子様から大人まで、二十人程が高級ホテル内の会場でボクたちを歓迎してくれる。前回が百人以上だったために、今回は本当に少人数なんだな感じ、少しだけ気持ちが軽くなった。
とは言え、雲の上の人である超VIPな方々のお相手が小市民のボクに出来るわけがなく、型通りの挨拶を自分に出来る精一杯の笑顔で返すのが精一杯であった。
やがて挨拶も一段落したのか、会場の皆さんは思い思いのグループにわかれて会話に花を咲かせはじめた。
ボクも予定していた自分の役割を終えて、ようやく肩の荷が下りたためか、気が緩んで今まで気づかなかったことに気づいてしまう。
取りあえず隣の麗華さんに一言告げる。保護者らしく付いてこようとする彼女を断り、一人お手洗いへ向かう。
流石にこの年にもなって、トレイに同伴してもらわなくてもいい。付いてこられたほうが、かえって恥ずかしく感じてしまう。
「うん、ちゃんと帰り道も覚えてる」
用を足してすっきりしたので順路を思い出し、元の会場に戻ろうとする。
廊下には少人数のVIPで貸切状態のため、当たり前だがボク以外は誰もいない。そう思っていた。
しかし何故か女子トイレから少し離れた場所に、青い顔をした女の人が壁に寄りかかって気持ち悪そうにしていた。
気づいてしまったからには仕方ないと考え、ボクは目の前の女性に小走りで駆け寄る。
「あの、大丈夫……には見えませんね」
見た感じ、確実に同じ国の人には見えない美しく輝く金色の髪が揺れる。どう考えても外国の人だろう。その人はものすごく気持ち悪そうにしていた。
周囲を見回しても不幸なことに、ボクと女の人以外は誰もいない。気持ち悪そうに苦しんでいる人を放ってこの場から離れるという選択肢はボクにはなかった。
取りあえず携帯で連絡を入れて、誰か人を呼んでもらおうと考えたとき、目の前の女の人が何かを喋りかけてきた。
「うぅ…あっ…貴女は?」
「ええと、ボクは…っと、そんなことはどうでもいいです。それより大丈夫ですか? 気持ち悪いなら、取りあえず吐いて胃の中のモノを外に出せば、少しは楽になりますよ」
そう言ってボクは目の前の女性が、楽にもたれかかれるように体を支え、背中に手を回して丁寧に擦りはじめる。
「そ…そんなことをすれば…貴女…が汚れて…しま……う…!」
「別に気にすることないですよ。それよりも貴方の体調のほうが大切です」
酒飲みの父のおかげで汚物処理で慣れているし、たとえドレスが汚れても自分のお金で購入したわけではなく、如月家からの貰い物だ。 使えなくなったところでこちらの財布は傷まない。
やがて目の前の女の人は胃の中のモノを一回、二回と吐き出す。当然のように受け皿となっているドレスのスカートが汚れてしまうが、そんなことは全く気にしない。
「全部出しきらないと辛いですよ。ボクのことは気にせず吐いてくださいね」
やがて胃の中身を全て吐き出したのか、汚物にまみれたボクに体を預けたまま、目の前の女の人はようやく体が楽になったのか、安心したように目を閉じて小さく呼吸を繰り返す。
ちょうど一段落したので携帯で連絡を入れようとすると、あまりにも帰りが遅いためか、遠くからホテルの従業員さんたちがこちらに向かって、慌ただしく駆け寄ってきた。
ボクは大まかな事情を説明し、大至急医務室へ運ぶようにとお願いする。これで自分の役目は終わりだと立ち去ろうとしたが、何故か後ろに引っ張られるように感じて、その場から動けなかった。
「あの…離してくれません?」
目の前の女性は華奢な体で、しかも意識が朦朧としているはずなのに、ボクの汚れたドレスを両手でしっかりと掴んだまま、一向に離す気配がない。
ホテルの従業員さんやいつの間にか集まってきた彼女の護衛の人たちも手を離そうとしてくれるのだが、病人を手荒に扱うわけにもいかずに、少し触っては離れることを繰り返している。
やがてこのままでは埒があかないと感じた周囲の視線を受け、ボクは仕方なくホテルの医務室まで、彼女に引きずられるようにして、一緒に付いていくことになったのだった。
医務室のベッドには金髪で華奢な女の子が横になり、スヤスヤと寝息を立てている。
もちろん、汚れた服はしっかり着替えさせて、体の隅々まで温かなタオルで拭き取られたため、今現在は汚れは一つも見えない。
ボクもこの部屋に入ってようやく手を離してもらい、彼女と同じように全身の汚れを取り除いてもらった。
同性とはいえ知らない人に体を拭かれるのはとても恥ずかしかったが、相手はそれが仕事なので今回だけだと思い、我慢してされるがままになった。
手も離してもらえたし今度こそお役御免だと、別に持ち込んだ薄手のワンピースに着替えて立ち去ろうとするボクを、彼女の護衛らしき人が、目が覚めた時に助けてくれたボクがいないと不安になるので、頼みますから一緒にいてくださいと懇願された。
普通は家族か知り合いの役目なのに何でボクが…とも思ったが、他人の家の事情にそこまで突っ込んでいいものかどうかと一人でウンウンと悩んでいる間に、護衛の人は申し訳ありませんが、急ぎの報告があるということで少し席を外しますと言い、そのまま退室してしまった。
そして現在、医務室の外にはボディーガードやホテルマンが控えてはいるものの、室内には椅子に座って備品の本をパラパラとめくるボクと、ベッドで横になっている女の子の二人だけしかいない。
「うぅ…んっ…知らない…天井です…ね」
何処ぞの天井マニアの少年のような台詞を口にしながら、女の子の目が覚めた。
全て吐いてベッドでしっかりと休んだおかげか、倒れる前よりも顔色はかなりいい。とはいえ体がまだ本調子ではないのか、起き上がれずに顔だけ動かして周囲を見渡す。
彼女はすぐ椅子に腰かけているボクに気づき、ハッとした表情で慌てて起き上がろうとし、続けて謝罪の言葉をかける。
「こっこんな姿で申し訳ありません! このたびは何とお詫びを…」
「ああ、お詫びなんて気にしないでいいよ。無理に起き上がらずに、そのまま横になっててよ。それより体調はどう?」
ボクは椅子から立ち上がり、まだ本調子でないため体を起こそうとしてふらつく彼女を支えて、もう一度ベッドに横にしてシーツをテキパキとかけ直す。
こういう病人の世話は、長年酒飲みの父親の面倒を見ていたために慣れているのだ。
なおも謝ろうとする彼女を手で制して、ボクはホテルの人が起きたら飲ませるようにと、置いていったスポーツドリンクの蓋を開けながら、先に口を開く。
「謝らなくていいから、ボクは一切気にしてないから、キミも気にしないでよ。それより喉が乾いてるでしょう? 今は水分を取って、無理せずゆっくり休んでよ」
「申し訳…あっ…はい、あっありがとうございます。……母様」
え? 何か今言葉の最後に変なこと聞いたような。多分気にせいだろう。というか気のせいであってください。お願いします。こんなツルペタのロリ体型で母親とか冗談じゃない。
そんなことを思いつつも、横になっている彼女の体を起こして口元にペットボトルを近づけ、少しずつ傾けてゆっくりと飲ませる。
ある程度飲み終わったらタオルで口元を拭いたり、少しだけ姿勢を変えさせて寝汗も拭き取り、おでこに交互に手を当てて、簡単に熱を測ったりもした。
もちろん異常がないことはこの医務室に運び込んだ時点で、何人もの関係者の人が入念にチェックしているが、介護生活の長年の癖というやつだ。
「熱も下がったようだし、しばらく安静にしてればすぐによくなるよ。それじゃ、ボクはこれで…」
「まっ…待ってください! 母様! ではなくて…えっええと」
だからこの年で子持ちになったつもりはないけど、椅子から立ち上がって扉に向かい歩いているボクを、引き止める声を無視することは出来ずに、振り向いて彼女の次の言葉を待つ。
「私はエリザ…と言います。貴女の名前を教えてくれませんか?」
「ボクは綾小路幸子、エリザさん、早く元気になるといいね」
そう名前を呼んで医務室を後にするとき、振り向きはしなかったからわからないけど、彼女はものすごく嬉しそうな表情を浮かべた気がした。
その後、扉の外に控えていた護衛かホテルマンらしき人に、エリザさんが目覚めたことを伝え、そのままパーティー会場まで案内してもらった。
戻ったボクを麗華さんとその家族は、主催者のために会場内からなかなか動けずに、一応何も心配はないと連絡は届いていたものの、三人共気が気でなく一分一秒でも早く駆けつけたいと思っていたらしい。
色々あってドレスを汚してしまい、現在は外歩き用のワンピースを着ているボクは、せっかく用意してもらった服を駄目にしてしまったことを謝り、全て自分が悪いのでエリザを責めないで欲しいことも付け加える。
「わかったわ。幸子ちゃんの言う通りにしましょう。ドレスのことは気にしなくてもいいわ。あと、外行きの服も似合うわね」
彼女の言葉に全く同意だとばかりに麗華さんの父母もウンウンと頷き返す。ドレスに比べれば安いと思うけど、パーティー会場でこれでもいいのかな? お金持ちの人の感覚はよくわからないと思った瞬間だった。
その後は何事もなく過ぎ、やがてパーティー終了の時間になった。
今回の来場者の人たちがお別れの挨拶に訪れ、一人、また一人と会場を後にしていく中で、ボクは見知った顔を見つけた。
彼女もこちらに気づいたのか、まだ本調子ではないため、少しだけふらつきながらも家族に支えられながら最後の来場者の挨拶にやってきた。
「この度はご迷惑を…」
「いえ、お気になさらないでください。この通り、幸子ちゃん本人も一切気にすることはないと申しておりますので…」
如月家とエリザさんの両親の挨拶は、長くなりそうだなと何となく思いはじめた時、ボクのワンピースのスカートが、何やらクイクイと引っ張られていることに気づいた。
「あの、綾小路さん。長くなりそうですし、二人で…その…」
上目遣いでこちらに訴えてくるエリザさんだが、問題はボクのほうが彼女よりも身長が低いため、何かに負けた気分になってしまう。
しかしこの場で立ったまま時間を潰すのも退屈なので、彼女に付き合うことにした。
「綾小路さん、あの…突然ですが、幸子さんと呼んでいいですか?」
「うん、いいよ。親しい人からは大体下の名前で呼ばれてるから、今さらだしね。最近では上の綾小路って呼ばれるほうが珍しいかな?」
如月家から少し離れた壁際でボクとエリザさんは向かい合い、適当な椅子に腰かけて、二人揃って肩の力を抜く。大人相手は疲れる。
「さっきは本当に助かりました。ありがとうございます。幸子さん」
「いえいえ、どういたしまして。病人の介護は慣れてるから、エリザさんも気にしないでよ。ほら、今は二人だけだし肩の力を抜いていいよ」
ボクはエリザさんに向かってわざとおどけて見せると、彼女は口元を手で押さえてクスクスと小さく笑ったのがわかった。体はともかく、心は完全に元気を取り戻したらしい。
「後ほどお礼に伺わせてもらいますね」
「そんなことしなくていいのに…」
本当にただ何となく体調が悪そうな彼女を見つけて、見て見ぬふりが出来ないために成り行き的に介護しただけなのに、そこまでしてもらわなくても思い、はっきりと断ろうとしたボクに、エリザさんは身を乗り出して両手をガッチリ握り、力強く説得をはじめる。
「幸子さんが個人的な事情で私を助けたように、これは私の個人的なお礼です。私がこうしたいと思ったからお礼に伺うのです。ですので、何も気にしなくていいのですよ」
こちらは気にしないでいいと今まで散々言ってきたため、逆にエリザさんに返されると、ボクからはそれ以上何も言えなくなってしまう。
そのため、観念して黙って頷くと、彼女は満面の笑みを浮かべた。そして向こうのお別れの挨拶もちょうど終わったようで、親族の方がエリザさんを呼んでいることに気づいた。
「幸子さんが了承してくれて嬉しいです。それでは私はこれで。また会えることを心から楽しみにしていますね」
エリザさんは自然な動作で椅子から立ち上がりスカートの両側を掴み、優雅に頭を下げる。ボクも慌ててペコリと頭を下げてお別れの挨拶を行う。
いつの間にかすっかり元気になった彼女は、嬉しそうに小走りに親族の元に駆け寄り、こちらを向いて笑顔で手を振ってきたので、ボクも手を振り返した。
やがてエリザさんの姿が見えなくなり、ようやく全てが片付いたため気を抜いた麗華さんが、軽く伸びをして関節をほぐしながら、こっちに歩いて来た。
「幸子ちゃんは、あのお方に随分と気に入られたようね」
「あのお方? エリザさんのこと?」
肯定とばかりに深く頷き、麗華さんは言葉を続ける。
「彼女が如月でも簡単には断れない相手の一人、私たちとは違った意味で脈々と受け継がれた某国の王家の血筋。いわゆる本物の王女様ということね。今回のパーティーはお忍びというわけね。そんな高貴な相手と、はじめてでも物怖じせずに話せる幸子ちゃんは、本当にすごいわ」
それは下手をするとボクのせいで外交問題になった可能性もあったということを自覚すると足が震えて。瞬く間にとてもではないが立っていられなくなり、床にへたり込んでしまう。
「どうやら知らなかったようね。でもおかしいわね。テレビで頻繁に流れてるはずなんだけど」
「ボクの家のテレビは、最近まで殆ど見られなかったから…」
主に父親が占領していたため、テレビは見られても野球中継ぐらいで、寝てても微かに音が漏れるとうるさいと起きて当たり散らし、家にいないときぐらいしか見られなかった。
それもいつ帰ってくるかわからないため、結局居間のテレビは最近までは殆ど使えなかったのだ。
「そっ…そうだったわね。つい自分基準で物事を考えてしまうわ。何はともあれ、今回はそのおかげでプラスに働いたのだから、結果オーライ…ということかしら?」
麗華さんが床にへたり込んでいるボクの手を取り、優しく立ち上がらせてくれる。しかし相変わらず子鹿のように足が震えてしまい、しばらくはまともに歩けそうにない。
「しばらくこの国に滞在するので、また何かあったらよろしく頼む…らしいわ。幸子ちゃんには個人的にお礼がしたいらしいから。何というか、まあ…覚悟だけはしておいてちょうだい」
麗華さんからの無慈悲な死刑宣告を受けて、ボクの足腰は完全に破壊されてしまった。
結局おんぶに抱っこという恥ずかしい格好で自宅まで送り届けられて、お風呂から消灯までその日は家政婦の加藤さんのお世話になりっぱなしとなってしまい、ボクはことあるごとに謝罪の言葉をかけると、むしろ家政婦として役に立てて嬉しい。もっと頼って欲しいと、にっこり笑いかけてくれた。
本当に加藤さんには頭が上がらない。ボクは精一杯の感謝を伝えて布団をかけてもらい、そのままゆっくりと目を閉じたのだった。




