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COLON:SERIES - 異世界への扉と導かれし者達  作者: 暦史書管理機構
シグレの異端争議典
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5-9:ぼくらなら

 単純な言葉に、思わず涙が溢れる。吹き飛んでいったサナムは傷を能力で治しながら、着地も出来ずに落ちて、またそれを治して立ち上がる。


「なんできた! 死ににきたのか!」

「そんなわけないでしょ! 貴方に生きてほしいから来たの!」


 守らなければならないものが増えた。手から溢れるような大きなものが。


「……ッぁ……壊れろ!」


 何が彼女の琴線に触れたのか、サナムから初めて抑揚のある言葉が発せられる。リリィが水を操って手を弾くことで、なんとか攻撃を逸らす。だが、そんなやり方がいつまでも通じるようなはずはない。


「何故!? なんで! 分からない、おかしい……なんで、死ぬ眼をしていたのに、生きようとする」

「お前が泣いていたからに決まっているだろうっ!」


 リリィが彼女の手を水で拘束し、一瞬でその拘束が破壊されるが、その時間があれば充分だった。 駆け寄って、彼女の手を掴み、無理矢理に抱き締める。サナムは抵抗し暴れるけれど、能力で俺が壊されることはない。


「……分からない」

「それでいい」

「貴様は、仲間がいなくなって、悲しい」

「……ああ」

「死にたいぐらいに、辛い」

「……ああ」

「いつも、優しい。熱いぐらい、焼けるぐらい、暖かい」


 少女はボロボロと涙を零しながら、泣きべそをかいた。


「……サナム。……よく、頑張った」


 何と言えば分からない。少なくともやったことを叱る気にはなれない。一緒に涙を流してしまいながら、隠すように抱き締めた。

 サナムはしばらく泣くと、えづきながら手に持っていた異端書を俺に向ける。


「……これは、もう……いい」


 俺がそれを受け取ろうと手を伸ばしたその瞬間、サナムの口が開き、全く違う口調の言葉が出てくる。


「こんな結末は……つまらない」


 黒い靄が異端書から放たれて、俺の手の皮膚がえぐれていく。一方で、靄がサナムの手を掴むように動き、異端書が再びサナムの手に戻る。


「せっかく、面白くなっていたんだ。人は死に、獣や虫は死ぬために集まり、大規模な破壊に次ぐ破壊。終末の方がよほどマシな破壊の空間……その結末が、和解して託す。あまりにもつまらない」

「異端書! 道具という名分はどうした!」

「元々この娘も人間の道具のような存在だったのだろう? ならば、道具同士に序列があるとは思えないが」

「詭弁を!」


 サナムの身体は先程までと違う動きに戻り、その身体の支配権が異端書にあることを悟る。

 リリィの能力がサナムの身体を襲うが、手を翳すこともなくそれが破壊の能力により相殺され、それどころか爆発を超えてリリィに破壊の異能が向かう。

 彼女に飛びつくようにして回避させ、高威力のレーザーによって超えてきた破壊を相殺させる。


「ははっ、まだ動けるというのか。壊し甲斐のある物体だ。下手な大陸より壊しにくそうだな」


 足に力が入らずに倒れそうになっていると、リリィが俺の身体を支える。


「やめろ! 一緒に死ぬ気か!」

「さっきも言った! ……生きてほしいからっ!」


 その言葉が、俺の渇いた心を潤すようだった。

 だが、俺は動くことも出来ず、リリィは俺を支えて離れようとしない。

 死んでたまるか、と思おうが無理には変わりなく、無慈悲に破壊の能力が放たれる。せめてリリィを守ろうと身体で覆った。

だが、いくら待っても俺の身体が粉々になることはなかった。


「やっぱり、私が……いないとダメね!」


 その艶やかな声に、俺は目を見開く。あり得ない。間違いなくロスヴィータは致命傷で、立ち上がることも出来ない傷だった。

 あの世に来たのかと思って振り返るが、やはり景色は破壊され尽くした地獄のような雰囲気の街で、けれどロスヴィータがそこに立っていてくれた。

 ロスヴィータのドレスは血で真っ赤に染まっている上に穴が開いているが、ロスヴィータの腹部には穴がなく、綺麗な肌が見えている。


「ヴィヴィっ!」

「ロスヴィータ! どうして……!」


 驚きながら二人で叫ぶと、彼女は不敵な笑みを浮かべながら片手でマシンガンを構えて、片手から炎を出していた。


「十五秒……保たせるから倒す方法をお願い!」


 考えている場合ではない。リリィに支えられながら周りを見渡す。破裂した水道管がある。あれで大量の水を得て……間違いなく威力が足りない。

 俺のレーザー……相変わらずセイレスの集めた虫などのせいで空が黒い、威力が足りない。

 ロスヴィータの炎とマシンガン……やはり、威力が足りない。


「ヨミヒトっ! 一人一人じゃなくてっ!」


 リリィの言葉が言い終わった瞬間、ロスヴィータの身体が吹き飛ばされる。

 迷っている暇はない。全力で行くしかなかった。


「ロスヴィータ! 全力で! 空に!」


 俺の言葉を聞き、ロスヴィータは吹き飛ばされながらも間髪入れずに返事をして、能力を発動させる。


「……行きなさい!」


 馬鹿デカイ火炎が空へと向かって飛び、俺はサナムにレーザーを撃って動きを止めさせる。


「まだ、やる気か!」


 異端書は歓喜の声を上げる。凶悪な獣のようにサナムの顔が笑い、俺は続けてリリィに言う。


「空気から水を奪って巨大なレンズを! 全てを出し切っていい!」

「無理を言うわね!」


 そう言いながらも、上空に水の塊が現れて、歪な水球が徐々に形を整えていく。

 俺は全力で、全てを出し切りながら能力を発動して可能な限り光を奪う。ロスヴィータが焼き払ったおかげで開いた虫の雲の穴。そこから射した光が、リリィの作ったレンズを通して収束し、俺に向けて降り注ぐ。だが、あの破壊の能力を打ち破るには出力が足りない。

 ロスヴィータが能力行使の疲労で倒れながらもマシンガンをサナムに向けるが、支える力がないせいでマトモに扱えていない。


「……一歩、足りなかったようだな」

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