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COLON:SERIES - 異世界への扉と導かれし者達  作者: 暦史書管理機構
シグレの異端争議典
14/39

3-5:警告

 ノアがトランプを配り、ニコライが確認して気難しそうに表情を歪める。


「ビッド、参加費に加えて一枚出す」


 ニコライが紙片を一枚机に置きながら言い、ノアは手札を確認し、二十一枚の紙片を置く。ノアの手札はキングのスリーカードが揃っており、期待値から言うと既に相当強いが……今かけられる最高額というのは、初っ端から勝負に出たと思われる。


「レイズ」

「ドロップだ」

「あ、そう? じゃあもらうね」


 これで二十対六八六、上々の滑り出しだ。ノアは上機嫌でニコライの配ったニコライ側にある手札を手に取る。

 ノアの手札は既にツーペアが揃っており、先に比べると幾分か弱いが、それにしても運がいい。


「当然ビッド、十五枚足させてもらうよ」

「また満額か。ふむ、分かっているようだな、自身が小物で、ラッキーパンチ狙いでなければ勝てないと」


 挑発を受けて、ノアのこめかみがピクリと動いた。


「……何、言ってるの」

「ドロップ」

「啖呵切っておいてそんなのでいいの? 後二回負けたら、参加費払えないからこっちの勝ちだよ」

「心配無用」


 イカサマをするなら配る時かと思ったが、特に何かあるわけでもなく単純なドロップ。これで残り十五枚で、ニコライにとってはほとんど後に引けない状態になっている。

 しかし……ノアが配ろうとする前に止めて、耳打ちをする。


「五枚以下になった時点で勝ちなんだから、満額じゃなくて満額マイナス五しろよ」


 正直、リスクだけがあってリターンがない。


「でも、それってどうせあっちがレイズするだけだから一緒じゃない?」

「それにしても、だ」

「レイズし忘れのミスを待つのも趣味じゃないんだけどね」


 ノアは手札を配り、ニコライは戸惑いなく手前にあった手を見る。


「ビッドだ」


 そう言いながら一枚紙片を上乗せした。ノアは四枚のエースが揃うという異様な運を見せて、先程のように満額でレイズする。


「レイズ」

「ドロップ」


 これで九枚。ニコライは降りることも不可能になり、圧倒的に有利な状況が起こる。


「ノアと言ったな」

「ん、そうだね。それが貴方を完膚なきまで叩き潰す男の名前だよ」

「世間話として一つ言っておく、私は……牡羊座だ」

「ッ! なっ!」


 星座占いで一位だったからなんだよと突っ込みたくなったが、必死になって耐える。


「……まぁ、どちらにせよ、僕の勝ちは決まったみたいなものだよね、ビッド」

「コール、まぁコールしか手はないがな」


 当然の展開。ノアの手も今回ばかりは良いものではなく、役なしだ。ノアはハッタリも込めてか二枚だけ変えて、運良く二のワンペアが完成する。

 ニコライは二枚変えて、もうコールやレイズの手順を踏む必要がないので手札を公開する。


「……四のワンペアか。こっちは二だから負けだね」

「だいたい一回分は返してもらったかな」


 一度負けたが、まだ十八枚初期よりも勝っており、負けたと嘆くほどでもない。

 だが……なんとなく妙だ。四のワンペアが揃う状況で、他はフラッシュやストレートも狙えそうにない手札なのに二枚だけの変更……どうにも不自然な変え方だ。

 ……いや、持ち替えた様子もないし、並びを思い出せば二枚目のカードを引くことでワンペアを揃えたということだろう。

 ノアが三枚変えたことでワンペアだと予測するのは納得出来るが……何故四を残した?

ワンペア狙いだとしても四という数字は小さく、ワンペア同士でも負ける可能性の高いものだ。

 トランプの裏面に何かしらの細工をしていて見えるのならば、ニコライが子の時に不利な手札を選ぶ必要がない。

 変え方を思えば、何かしらのイカサマがあるが……瞳に反射したカードを見たとかか?


「少し止めさせてもらう」

「何かね」

「ノア、薄目でやれ。瞳から反射したもので手札を盗み見られている可能性がある」

「いや、そんなとんでもあるわけ……本気みたいだね」


 これでまた出方を探ろう。幾度かのプレイを繰り返し、勝ち負けが起こるが……若干の差でニコライが押してきている。

 勝敗の回数は然程変わらない……むしろノアの勝率の方が高いが、ニコライが負ける時は常に自分からドロップしており、大きく負けることはなく、反対にノアは多く勝っているが負けた時も多く取られている。

 間違いなくノアの手札を盗み見られているが、その種が分からない。幾ら探しても見つからない。

 ニコライの視線を探ろうと挙動を確かめようと、イカサマの正体は見れたものではない。


「……リリィ、ルールは覚えたか?」

「もちろん。……でも、代わったところで意味があるのかしら?」

「確かめたいことがある。ノア、リリィと代わってくれ。……その前に、一応外に出てから話すか」

「……いや、このままでも勝てるよ」

「無理だ」

「……ニコライさんが牡羊座だからですか?」

「違う。と、見張りにシードは残っていてくれ」


 急いで部屋から出てから、念のためにクルーザーから降りてため息を吐き出す。


「どうかしたのかい?」

「……どうしたもこうしたも、あれはおかしいだろ」

「何がだい?」


 こいつ気が付いていないのか。何から説明すべきかを考えていると、リリィが呆れたようにノアに言う。


「どう見てもイカサマされてたでしょ。カードの内容が分かっていたみたいな感じだった」

「正確に言うと、こちらの手札だな」

「どうやってかな」

「目に見える仕掛けはなかった。ということは方法は一つだろう」


 リリィが頷く。


「能力……ね。それの正体を見つけたらいいのね」

「ああ、俺とノアは別行動をするから、引き伸ばしながらやってくれ」

「別行動?」

「ああ、そちらはそちらに集中してくれ」

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