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プロローグ
知らない場所だった。
白い。どこまでも白い風景が広がっている。
その空間を歩き始める。どこからか聞こえる、俺を呼ぶ声に従って。
夢のような浮遊感。
その清浄で完全な世界を、俺は進んでいく。
やがて、一冊の本を見つけた。
少し先に落ちているその本は、古びているようで、真新しくもある。
気づくと、同じように本を見下ろす人達がいた。年齢も人種も様々だ。
周囲にはいつの間にかさらに人が増え始め、本を囲むように円を形作っている。
『集まったか』
声はどこからともなく聞こえたが、その本が喋っているのだと自然に理解できた。
『私の名はシグレ。世に救済をもたらすもの』
シグレ……?
『この身は紙片となり、この世にもたらされた。そのすべてを集めたものに私は従おう』
紙片……何を言っているんだ。
『探せ、イデアの子らよ。世界はそれを望んでいる――』
その言葉を最後に、世界は眩い白に満たされていった。