四話
続きです。
ノクトは少女の羞恥心を解消しようと話題を変える。
「ここにずっと居るのもなんだし…どこか休めそうな所はあるかな?」
すると少女は、わずかに赤みを残す顔で、
「ニールで、あっ、この村の名前はニールって言うんですけど、ほとんどアイゼン皇国の兵士に壊されてしまっていて…休める場所は…」
と言い淀んだ。
(ニール?そんな村は…それにアイゼン皇国って…?この大陸にはアインツ帝国しかないはず…)
この世界は四大陸で構成されており、人族は南にあるイグナイトで暮らしている。否、イグナイトでしか暮らしていないのだ。なぜならばこの世界は、それぞれの大陸で種族の棲み分けがなされているからだ。
(そしてそのイグナイトは、全土をアインツ帝国が統治下に置いている。アイゼン皇国なんて国は存在しない。それに、ニールなんて村はアインツになかったはずだ)
ノクトは魔族との戦いで大陸各地を転戦していた。その都合上、大陸にある村や町の名は網羅しているといっていい。ノクトが全く思い当たらないのは、どう考えてもおかしい。
ノクトは疑問を解消すべく、少女に問いかける。
「えっと…このニールっていう村はアインツ帝国にあるんだよね?」
「はい。この村はアインツ大帝国の庇護下にあります。ですが、大帝国の最北端に位置しているため、隣接しているアイゼン皇国がいつ攻めてくるのかと、怯えながら暮らしていたんです」
少女は一旦言葉を切り、
「ですが、大帝国の北域には第二皇軍を率いる“白狼”様がおられるからと、逃げずに暮らしていたんです」
と、そこで異変に気付く。
「あの…どうかしましたか?」
目の前にいる自分たちを救ってくれた少年が、呆然とした表情を浮かべ、黙りこくっていた。
(……最北端?帝国の最北端は海が広がってるはずだけど?アイゼン皇国ってなんだよ。いつできたんだよ…ん?待てよ…いつ?)
ノクトはある考えにいたり、その考えをバカバカしいと思いながらも聞いた。
「今って神聖歴何年?」
と。
(0年の4月のはずだ…魔族を倒した翌年なんだから)
魔族が世界を支配していたころを旧暦、魔族を倒した翌年からを神聖歴と表すことになっている。これは、四種族一致で決まったことだ。
だが、返ってきた答えは―――
「今は、神聖歴1031年ですよ?」
ーーー無情だった。