うたかたの夢
本編入ります。
そこは地獄だった。
鉄錆の匂いが辺り一面に充満し、大地が赤く紅く染まっている。周囲から聞こえてくるのは怨嗟の声、声 、声。恨み、怒り、嘆き、ありとあらゆる負の感情で満ち溢れていた。
そんな地獄を英雄王は歩いていく。その手には光り輝く剣が握り締められていた。
「死ねェェェェ、家畜風情の人族がァァァ!」
英雄王にとっての敵、魔族が血で染まった剣を振りかざしながら向かってくる。
英雄王は、
「キミたちに慈悲は与えない。疾く、死ね」
剣を横薙ぎに振る。それだけで、その一瞬で魔族は首を切られ、大地に伏した。
その絶技を成した英雄王は顔色一つ変えずに、歩み続ける。その瞳に感情は無く、深淵だけがあった。英雄王は虚無を携え、ただ一点を目指す。
英雄王にとっての最大の天敵、怒りの根源、それすなわちーーー"五大冥王"
そして、遂に辿りつく。
「 やっと逢えた…この時をどれほど待ちわびたことか。数多くの魔族を殺し、ただひたすらに歩み続けてきた。やっとーーー殺せる」
英雄王はその時初めて感情を露わにする。
口元には禍々しい笑みを湛え、凄絶なまでの殺気を放つ。その異常なまでの殺気は、大気を軋ませ、物理的な圧を持って五大冥王に降り注ぐ。
手にしていた光り輝く剣は、いつの間にか黒く染まっており、時折嘆くように明滅していた。
「さぁ、復讐の時だーーー鏖殺してやる」
天喰黒淵
世界は黒く染まる。
といっても夢なんですけどね。夢とは記憶の整理でもあるらしいです。なので、主人公ノクトの過去でもあるわけです。主人公の闇は深い…のかも。




