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英雄王、その未来は  作者: ねむねむ
七章 希望と絶望の狭間で
145/223

五話

続きです。

 時は〝天の橋〟での戦闘終結後まで遡る――

 暗い、昏い闇の底。

 光が一切届かぬ地の果てでは、川が静かに流れていた。

 その川に体の半分を沈める形で一人の少年が横たわっている。

 闇と同化する色彩の髪を持ち、暗闇の中にあっても尚、輝く白銀の衣を身に纏っていた。

 と、そこに近づく複数の存在がいた。

 一つ目巨人(サイクロプス)中級悪魔(デーモン)地竜(アースドラゴン)――どれも人の手が入らぬ秘境に生息する魔物である。

 彼らは人が個人では絶対に勝てないほどの力を有し、もし人里に現れたのなら軍が討伐に赴かなければならないほどの存在だった。

 そんな強者たちは生気がまったく感じられない少年の元までやってくると静かに座り込んだ。

 魔物は人を食料としか見ておらず、たとえ死体であっても捕食対象である。故にこのような光景は異常だと言わざるを得ない。

 魔物たちは少年を守るように囲んで座り、ただ静かにその時を待っていた。

 どれほどの時が経ったのか、川のせせらぎと魔物たちの息遣いだけの空間に足音が響き渡った。

 足音のする方に魔物たちが視線を向ける――と、暗闇が徐々に晴れていき、白銀の光が現れた。

 光源は人族の少女の姿をしていたが、魔物たちは本能で理解し、平伏する。

 あの少女は自分たちよりも遥かに強者であり、食物連鎖の頂点に位置する存在だと感じ取ったのだ。

 白銀の長髪を持つ少女が、道を開けてくれた魔物たちの間を通って黒髪の少年の元までたどり着く。

 「……時が満ちた。やっと会えるね――〝黒天王〟」

 呟いて、その細腕から想像もできぬ膂力で少年を抱き上げると、静かにその場を後にする。

 残された魔物たちはその背を見送ると、黙々と各々の住処へと戻っていった。


 *****


 神聖歴千三十一年十月五日。

 〝大絶壁〟――奈落。

 闇が支配する空間にあって、僅かな光源に照らされる場があった。

 かがり火が照らす石作りの祭壇には濃密な闇が蟠っている。

 闇が侵食しているのは祭壇に横たわる一糸まとわぬ黒髪の少年の体。

 そんな光景を祭壇の下から黙って見つめる少女がいた。

 紫水晶色の髪持つ少女――ミルト・フォン・アイゼンである。

 「毎日見ていて飽きないの?」

 と、ミルトの背後から声をかけた者がいた。

 振り返ったミルトの瞳が白銀の長髪を揺らす少女を捉える。

 「……〝白夜王〟(ガイア)さまでしたか。わたしが飽きることなどありませんよ。お兄様が再誕なされる時まで、その身をお守りするのが役目なのですから」

 「それはわたしの役目だと思うけど……ま、どちらでもいい。それより――もうすぐ目覚める。準備は終わってる?」

 聞かれたミルトは首肯する。

 「ええ、完璧に整っています。後はお兄様――〝黒天王〟さまが目を覚まされるのを待つばかりです」

 「そう。ならいい」

 短く言った〝白夜王〟がミルトの隣にやってくる。

 「……〝白夜王〟さま?」

 「もうすることないから、わたしも見ている」 

 それっきり黙り込む両者。神である〝白夜王〟と人族に過ぎないミルトがこうして言葉を交わすこと自体が不敬なのだが、〝白夜王〟はそのようなことを気にする性格ではない。

 しかし〝白夜王〟は無表情無口が常であるため、必然会話が盛り上がるはずもなかった。

 再誕の儀を行った約一か月、この少女と共に暮らしたミルトはそのことを十分に理解したために、不必要な会話を行わないようにしていた。

 と、ここで場に変化が訪れる。

 蟠っていた闇が蠢き、空間が震え始めた。祭壇上からあふれ出すおぞましい気配が大気を駆け抜け、ミルトは思わず体を震わせてしまう。

 漂い続けていた闇が全て少年の体に入り込み――そして少年がゆっくりと上半身を起こした。

 少年は己が体を見つめたり、手を動かして調子を確かめていたが、やがて立ち上がるとミルトたちを睥睨した。

 その瞬間――ミルトは歓喜に包まれた。

 少年の引き締まった体にではない。そんなもの、この一月でとうに見飽きている。

 では何に?そう問いかけられたらミルトはこう答えるであろう。――孤高の王の瞳に、と。

 少年はかつての両目が黒ではなくなっていた。右眼――エルミナ聖王国との戦いで失った瞳は真紅に輝き、右眼は黒ではあるが、禍々しい闇を孕んでいる。

 少年――()が口を開く。

 「覚醒は成った。これで僕は〝王〟としての力を取り戻せた。――感謝する」

 ミルトは片膝をつき、首を垂れる。

 「勿体なきお言葉。あなたさまのお目覚めに心より喜び申し上げます」

 蓮はゆっくりと祭壇を降りると、〝白夜王〟に目線を向ける。

 「キミにも感謝しなくちゃね。……ありがとう」

 「別にいい。それよりもまず服着て。……わたしだって女性だよ」

 言われた蓮は己の体を見下ろし、頷く。

 「それもそうだね。で、服はどこにあるのかな?」

 「こちらです、お兄様」

 立ち上がったミルトが案内してくれたのは木製のこじんまりとした一軒家。

 ここは贅を嫌う〝白夜王〟の居住であった。

 その一室に案内された蓮は部屋の中央に置かれた衣文掛けに目線を送る。

 「実に久しぶりだな。……キミにとっては千年の時か――〝黒薔薇〟」

 衣文掛けに掛けられていた黒衣に語り掛けた蓮は静かに手を伸ばす。

 瞬間、黒衣がひとりでに浮き上がって蓮の体に巻き付いた。

 捕食するようにしばし蠢いていた〝黒薔薇〟だったが、やがて花開くように広がりを見せる。

 それはアインス大帝国の旧軍服を形取っていて、その上から外套を広げていた。肩口には竜の意匠が金糸で施されており、軍服には薔薇が描かれている。

 「ふう――……〝天銀皇〟もいいけど、やっぱり王としての体にはこちらの方がよく馴染む」

 〝天銀皇〟は先の戦いで力を封じられていて、そのまましまい込んである。おそらくだが、もう着ることはないだろう。

 黒衣に手を当て愛おしそうに撫でていた蓮だったが、部屋の奥から放たれる魔力に気づいて足を動かす。

 そこには刀掛けが置かれており、一振りの黒刀が鎮座していた。

 鞘も、柄も黒一色の刀を蓮は躊躇いなく手に取った。

 「キミも久しぶりだね――黒帝(フラガラッハ)

 黒塗りの鞘から抜き放つと、中から現れたのは漆黒の刀であった。

 柄も、鍔も、刀身さえも――黒。何処までも深い闇を刀の形にしたように思えるほどの黒一色である。

 蓮はしばし黒刀を眺めていたが、やがて鞘に納めると、腰に吊るした。

 身支度を整えた蓮は背後に向き直る。

 「さて――それじゃあ、往こうか」

 そう言って机とソファーが置かれた部屋に行くと、三者一様に座り、机を囲む。

 「まず……あの戦いからどれくらいの時間が経ったんだい?」

 と、蓮が訊ねれば、先ほどから憧憬の瞳を向けてきているミルトが答える。

 「今日が十月五日ですから……一月ほどですね」

 「そんなにか……」

 (でも計画的には十分余裕があるか……)

 それだけの時間を蓮は稼いだ。今頃アインス側は戦力を整え終わっていることだろう。

 蓮はミルトと〝白夜王〟の顔に目線を向けると小さく頭を下げた。

 「改めて言うけど……本当にありがとう。二人の協力がなければ僕は再誕出来なかった」

 ミルトには危険を冒してまで戦いで失うであろう体の部位を回収してきてもらい、〝白夜王〟には再誕の儀を行っていた一か月の間、無防備であった体を守ってもらった。

 故に蓮は本心から感謝している。

 「素直に受け取っておきますね。……それより、あんなに危険な真似をしなければいけなかった理由を教えてもらえませんか?何故一度死ななければ(、、、、、、、、)ならなかったのです?」

 首をかしげるミルトに、蓮は感謝の意味合いを込めて素直に教えることにした。

 「どうしても必要なことだったんだ。〝世界神〟の力を完全に体から排除するためには〝天銀皇〟や〝白帝〟といった神力を纏うものと契約を断ち切る必要があった。でも契約はとても深く、それこそ一度生物として死ぬしかなかったんだ」

 千年前、蓮が〝世界神〟に挑む前に千年後に飛ばされてしまったことへの反省から今回の死を選ぶこととなった。〝世界神〟の力である神力と蓮の体が繋がっていたことで、あっさり千年後に飛ばされてしまったことは屈辱的であり、大いに反省すべき点である。

 (こんな初歩的なミスを犯してしまうなんてな……僕はやはり詰めが甘い)

 「そしてもう一つ、千年前はその契約があったせいで〝王〟としての覚醒が不完全だったんだ。真に目覚めるためにも一度死んで、〝王〟として体を一から構成しなおす必要があった」

 千年前の大戦時、蓮は英雄王として〝五大冥王〟の一角〝黒天王〟に挑み、討伐した。その際に蓮は〝王〟としての力と知識を継承し、真の敵が〝世界神〟であることを知った。

 それから密かに打倒する計画を他の〝王〟たちと進めていたのだが、蓮の失態からご破算となってしまう。

 (だけどもう同じミスは犯さない。今度こそ殺してやる……!)

 蓮が内心で闘志を燃え上がらせていると、ミルトが話しかけてきた。

 「なるほど……ではこれからどうしますか?表舞台に出て、アインス兵を鼓舞することもできますが?」

 「それは出来ない。今頃、アインス兵たちは僕の復讐をするために士気があがっているだろうから、ここで僕が出てしまえばかえって浮足だってしまうだけだよ」

 蓮が生きていると知れば、彼らは喜び勇むだろう。〝軍神〟の末裔は不死身だと、彼こそが次代の皇帝に相応しいと声高に主張してくれることだろう。

 だが、それでは意味がない。蓮が戦死を装ったのは己の為と、アインスの為なのだから。

 「……わたしの思い違いでなければ、皇位継承問題についても憂慮なされたのでしょうが、それは考えすぎでは?」

 ミルトの言に、蓮は曖昧な笑みを浮かべる。

 実はそうでもない。

 現に千年前、アインス大帝国はその問題であやうく二分しかけた。初代皇帝にはリヒトが相応しい、いや蓮だ――などと、貴族諸侯が争い始めたのだ。

 当事者の気持ちなど蚊帳の外で、いくら蓮が玉座に興味がないと言っても聞きやしなかった。しまいには暗殺、謀殺が多発し、挙句の果てには軍を引っ張り出しての内乱になりかけた。

 その時点で蓮は決断した。これまでの功績をすべて捨てて、一兵卒まで身分を下げたのだ。

 これには他種族の王をはじめとする貴顕の者たちが驚いて、アインス大帝国に抗議を行った。それにより貴族諸侯らはアインスが孤立する事態を避けるために内部抗争をやめ、蓮とリヒトに謝罪をした。

 蓮はリヒトと相談して再びの内部抗争を避けるべく、皇位継承権は捨てたまま、大将軍として軍部を纏める役割を担うことにしてどうにか事態を収束させたという過去がある。

 (皇位継承権を放棄したとはいえ、民衆の意見を無視はできない。僕が祭り上げられる可能性だってある)

 それに、仮に蓮が皇帝になったとしても内部分裂は必定といえた。

 千年という長い時を経た国家であるため、皇家の血筋を神聖視する者たちがいるからだ。

 彼らからしてみれば、蓮は先代皇帝と当代の緋巫女に認められて皇家に入ったとはいえ、何処の馬の骨ともしれぬ存在。確実に英雄王の末裔だという証拠はなく、血統を重視する彼らは蓮の存在を疎ましく思っていた。

 (つまり僕が皇帝になっても反対する者たちがいるということだ)

 それでは駄目なのだ。平時ならともかく、今は戦時。しかもアインスにとってかつてないほどの危機的状況であり、一致団結しなければ乗り越えることができない。

 そんな中で内部分裂なんかしてしまえば、それこそ国家崩壊を招いてしまうだろう。

 「とにかく僕はアインスの第三皇子として表舞台に出る気はないよ。表舞台に出るとしたら――〝王〟としてかな」

 声はどうしようもないが、せめて素顔を隠す必要があるだろう。

 (何か隠す物…………そうだ)

 思いつくと、蓮は壁に掛けられていた〝天銀皇〟に手を伸ばす。

 既に力は封じられているが、物を取り出す分には問題ない。

 蓮はかつてシュトラールの隠し部屋で見つけてしまい込んでいた鬼面を取り出した。

 「それは確か……おとぎ話に登場する〝鬼神〟(サタン)をかたどったお面ですね。それをつけて表舞台に上がられると?」

 「ああ、そのつもりだよ」

 ミルトに返事を返した蓮は鬼面を被る。

 (まあ、神話伝承にある〝鬼神〟ってのは、むかし僕のことを敵が畏怖して呼んだ名なんだけどね)

 古き力と名を再び手にすることになった蓮は複雑な思いに駆られた。

 「……さて、次だ。〝白夜王〟、計画はどうなっている?」

 蓮が鬼面を手で調節しながら訊ねると、白銀の少女が無表情で応じた。

 「順調。でも本格的な攻勢にはあと三年ほどかかるって〝天魔王〟が言ってた」

 「それでいいさ。僕も〝絶対悪〟(アジダハーカ)の起動にそれくらいかかるし、アインスを始めとする各国も戦力をきちんと整えるのに時間がいるだろうからね」

 英雄王の末裔である蓮をエルミナ聖王国が殺したことで、周辺諸国全体に反〝世界神〟運動が広がりつつある。

 「ミルト、アインスを含む各国の動きはどうだい?」

 「お兄様の予想通り、エルミナ聖王国に復讐戦を挑めという声が日増しに高まっている状況です。アインス大帝国のみならず、わたしの国や他の周辺諸国でも同様の動きがみられていますね」

 〝双星王〟信仰の対象である〝軍神〟の末裔蓮が〝世界神〟信仰国家であるエルミナ聖王国に討たれる。これによって〝天の橋〟東側の国家の団結を図るという目的も達成されたということだ。

 (一石二鳥どころじゃないな……)

 「円卓会議は上手く行ったってことかな?」

 「そのようですね。現にアインスの首都クライノートに各国の援軍が続々と到着しているようで、先日出陣準備が整ったと報告が来ました」

 (これで反撃ができる。けど、おそらく〝天の橋〟西側に追い出すのが関の山といったところだろうな)

 アインス大帝国のみならず、周辺諸国も度重なる戦争で疲弊している。今回の反攻作戦だって無理を通して戦力をかき集めたという状態であり、エルミナ側が本国にどれほどの余力を残しているのかが分からない以上、征伐はできないだろう。

 (だからこその三年だ。とはいえ、今回の反攻作戦に勝利するのが前提条件となるけど)

 「ミルト、現在の戦況を教えてくれ」

 「はい、少しお待ちくださいね。……ええっと、確か――……あった、これですね」

 懐を漁ったミルトがなにやら紙を取り出して見せてくる。

 それは報告書で、蓮は読みながらミルトの解説を聞くことにした。

 「エルミナ聖王国はお兄様との戦いで三万ほど失ったようで戦力が落ちているようです。また副司令官をはじめとする多くの指揮官を失ったことで、統制に難が出始めたようで、軍の一部では司令官を軽んじる動きもみられるとのこと」

 蓮は先の戦いで指揮官クラスの人間を狙い殺すよう各部隊長に命じていた。それが功を奏したということだろう。

 「そのことから司令官は兵士たちの意見を尊重することにしたようで、進軍を再開しました。もっとも、行軍速度は遅く、本意ではないと伝わってきますが」

 「……アインス側はどうだい?」

 「アインス大帝国をはじめとする周辺諸国は〝円卓同盟〟を結成。連合軍二十五万を大帝都に集結させ、出陣を待っている状態です。ここに私が率いているアイゼン皇国軍五万が加われば、当初エルミナ聖王国側がそろえてきた三十万と同数になります。……もっとも既にエルミナ側はレンお兄様との戦いの結果、数を減らして三十万もいませんが」

 殲滅した第五征伐軍四万、先の戦いでの三万、合わせて七万をエルミナ聖王国は失っている。報告通りならば残りは二十三万、アインス側が数的有利である。

 (本軍は十五万しかいない。……第一、第二征伐軍と合流する可能性が高いか?けど派閥争いの関係もあるし……)

 「エルミナ聖王国は二つの派閥に分かれていて、今回の戦いにもそれが影響してるって報告があったんだけど……実際のところどうなんだろうか」

 アインス軍を率いていた頃にはその辺の情報があまり入ってこなかった。自由に動けたミルトならばそのあたりの情報を持っている可能性がある。

 するとミルトは頷いて更なる報告書を取り出し見せてきた。

 「〝聖王〟派と〝聖女〟派の二派閥に分かれているそうで、今回の戦争では第一、第二征伐軍が〝聖女〟派、第三、第四征伐軍が〝聖王〟派だったみたいですね。残る第五征伐軍はどちらにも属さない、いわば日和見の連中だったようです」

 ミルトのなかなかに辛辣な物言いを聞きながら、蓮は思案気に視線を彷徨わせる。

 (だとすれば合流しない可能性も出てくるな。でも合流したら面倒だ。今のうちに第一、第二征伐軍を叩いておくか?)

 と、ここで手元に視線を落とした蓮は気になる個所を見つけた。

 「ミルト、この報告書には第一、第二征伐軍とにらみ合って見逃したって書いてあるけど……?」

 「ええ、そうしました。叩いて戦力を削っておいても良かったんですけど、お兄様に取っておきたくて」

 ミルトがなぜか頬を染めて言ってくるので、蓮は若干頬を引きつらせた。

 (対価の件といい……ミルトは僕が欲しいのか?)

 どのみち過ぎたことは仕方がない。

 「なら、準備運動もかねて第一、第二征伐軍を叩くとしようか。アイゼン皇国軍には僕のことをなんて説明するつもりだい?」

 「わたしの側近ということにします。初めは疑われるでしょうが、お兄様が実力を見せてくだされば問題ないかと。そしてゆくゆくは元帥として軍部を任せたいと思っています」

 「そこまで信用してくれるのはありがたいね。期待に沿えるよう努力させてもらうよ」

 蓮が立ち上がると、ミルトも追従する。

 「〝白夜王〟、いろいろとありがとう。積もる話もあるだろうけど、この戦いが終わってから時間を取るから許してもらいたいな」

 「……分かった。待ってる。他の〝王〟たちにも伝えておくから」

 「頼んだよ」

 その言葉を最後に、蓮はミルトを連れて外に出た。

 (いよいよ始まるか。まずは僕の肩慣らしついでにルナの負担を減らしてあげるとしよう)

 蓮は鬼面の下で、獰猛な笑みを浮かべた。


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