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英雄王、その未来は  作者: ねむねむ
六章 古き神話の終焉
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プロローグ

第六章〝古き神話の終焉〟編始まりです。

 燃えている。

 見渡す限りが業火の中に包まれていた。

 『なんで……なんでこんなことにッ!』

 恐怖と焦燥を滲ませた声を上げながら馬を操っているのはアインス大帝国の兵士。彼は馬蹄で昨日食事を共にした戦友を踏みつけてひた走っていた。

 下を見ることは避けていた。見てしまえば正気を失ってしまうと本能で察していたからだ。

 焼けた大地には夥しい数の死体が転がっている。どれも泥にまみれ、四肢が欠損し、血と炎の海に身を沈めて天を恨めしげに睨みつけていた。

 視線を遠くへ向ければ燃え盛る村落の姿を認めることができる。敵はこれまでの戦争の常識を覆すほどに残酷であり、無辜の民――無抵抗の者ですら凶刃にかけていた。

 敵は一様に宣言している。

 『女神ルミナス様に勝利を!偽りの神を崇めし異教徒共に死を!!』

 そう言いながらアインス人を殺しているのだ。彼らの凶刃に例外は無く、老若男女等しく死を与えている。

 兵士は敵に対して理解できないが故の恐怖を抱いていた。神の名のもとに殺し、奪い、犯しているエルミナ聖王国の兵士たちの姿は只々理解しがたいものであったからだ。

 凄惨な戦場跡を駆ける兵士の前に一人の人物が立ちはだかった。白き全身鎧を纏い、輝く槍を手にしている。

 『何処へ行く、敗残兵よ。貴様は散っていった仲間たちを置いて一人生き残ろうというのか!』

 『ひっ――ど、どけえぇぇ!』

 兵士は知っていた。目の前にいる人物が何をしたのかを。その圧倒的な武力を。

 故に馬の腹を叩き、相手をひき殺そうと加速した。重厚な鎧があろうとも騎馬の突進力を前にしてはなすすべもない。

 だが――眼前の人物は常人ではなかった。

 『異教徒めが……死ぬがよい』

 声の高さから女であると推測される鎧の人物は、手にしていた槍を天高く掲げた。

 次の瞬間――神雷が降り注いだ。

 鼓膜を破りかねない轟音と共に天より来る雷が馬ごと兵士を打ち滅ぼした。

 凄まじい衝撃が大地を揺るがし、空間を震わせる。

 鎧の女性は集まってきた自軍の兵士たちに向かって声高らかに告げる。

 『殲滅せよ、征服せよ、蹂躙せよ――天命は我らにこそある!!』

 その言葉に兵士たちは大音声を持って答える。

 『大いなる母のために!我らが唯一神のために!!』

 鎧の女性は再び槍を天に向けて突き上げると、彼方に届けと言わんばかりに喉を震わせた。

 『異教徒共を滅せよ!これは――聖戦である!!』

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