話を聞きに行く
「なるほど、思いもしなかったな」
「だろ?」
「論外だ」
「何故?」
「負けるのは性に合わんからな」
なるほどな、確かにそれでは俺の意見は論外だ。
「気持ちはわかるが、だがわかっているのか? さっき言ったくじ運次第というのはどうあっても避けようのないものだぞ?」
「何故私がそんなものを避けなければならない? 誰が相手だろうとたたき伏せるだけだ」
「そうか、それもそうだな。くじ運なんてものは俺にも関係のない話だ……お前たちが勝ち上がってくる限り俺たちとぶつかる道理だな」
「その自分の勝利が当然という考えもここまでくると清々しいな」
そういうものか? 飲んでいたコーヒーを置いて周りを見回すと全力で苦笑いを浮かべていた。こいつらがこういう反応を見せるということはそういうものなのだろう。
「そ、そうだ! 天蓋はどうしてこの大会に出場したの?」
「どうして? ……それは、……成り行きとは……少し違うか」
思わず言葉に詰まってしまった。あの一連の流れをどう説明すればいいだろうか? そもそもの理由はクラウディア先輩への礼のためだが……それで通じるか? 俺剣術部所属だし、普通に部長命令だと思われそうだな……そう思われるのも癪だが、全部説明も面倒だし。
「確かにいきなり新聞で優勝宣言! なんてされても意味わかんないわね」
「ああ、あれはその場の勢いだ」
「勢い!? あんたそんな感じで王様相手にそんな事言い放ったの!?」
「まあー、いろいろ事情はあるが、一言で表現したらそうなるな」
流石に全員が引いている。
「お前は……あれだな。大物だよ」
「まあな」
「まあなって別に褒めてないからな!?」
褒められたことじゃないからな。
「……とにかく、俺が大会に出場した理由は、そうだな……優勝するためだ」
「優勝……?」
「そうだ、そしてできるならば剣術部の生徒が優勝した方が都合が良い訳だ」
「お前はどうなんだ? オリヴィエ」
今度はオリヴィエに対して出場する理由を聞いてきた。そういえば聞いたことなかったな、こいつが俺と組んでくれた理由。
「私か? こいつが出場すると言ったからだ」
お前それ一番カッコいいやつじゃねぇか。
「なるほど? つまりお前達は特に目的もなく優勝を目指しているわけだな?」
「ああ、優勝する事が目的だからな」
「……この大会に出場している奴らは皆何かしら目的を持って参加している」
「だから?」
オリヴィエが聞き返してきた。目的を持たない俺達は少数派だと遠回しに言われたからか、逆に上機嫌な気がする。
「目的も夢もない奴らが優勝出来るほど風霊祭は甘くはないぞ」
「実力だけだ。優勝に必要なものはそれだけだ。他に何が必要だと言う?」
「オリヴィエ、本気で言っているのか?」
オリヴィエの言葉に対し、いくらか呆れも混じった口調で聞き返してきた。
「ああ、百歩譲って運だろうな。願い事を叶えて欲しいなどという事を考えている奴が何故優勝出来る? ……私にはお前が何を言いたいのかわからんよ」
「皆何かしら願いを持っている。夢を叶えるために戦っている奴が集まるのがこの大会だ! その夢を奪いながら勝ち進み、なんとも思わないと言うのか? 目的もなく参加して」
「関係ないだろ」
「……何だと?」
努めて冷静に返事をしていたが、その声には明らかに怒りが混じっていた。
「この世に他人の夢を奪った事のない奴が何人いる? それともお前は日常生活では何人の夢も犯していないと断言する事が出来るのか?」
「それは」
相手の返答を聞く前に話し続けた。
「関係ないんだよ他人の夢なんて。気にすれば優しい人か? 結局何もしないんだから無視して勝ち進むしかないだろ」
「そんなことはない! 互いに願いを叶えようと努力してきた者同士通じ合える事があるはずだ」
「なかったらどうする? 憎悪をぶつけてきたら逆恨みと断ち切るだろう」
その時は軽蔑でもするのか? 手を差し伸べておいて憎悪は受け付けないなんてバカな話があるか。それで誰と分かり合える?
「そのくらいにした方が良いんじゃないかな? 他にも人がいるんだし」
「……ああ、そうだな」
少し沈黙が続いたがそれを破ったのはやはりエリーだった。
「あはははは、ごめんね? こいつ普段は普通なんだけど、デュエルに関しては過激だから」
「いや、気にしてないよ」
隼人は笑顔で受け答えしていた。
「そ、そうそう! オリヴィエとデュエルした時も首を締め落とそうとしたからな」
「く、首を!?」
「うん、あれは怖かったね」
「よくそんなデュエルしながら組む気になったな」
あれは状況が状況だったからな。今思い返してもあれほど焦ったことはない。
「まあ初めての友達だからね」
「な、何を言う!? そんなことはないぞ! 初めての友達は私が3歳の時、使用人の……」
「使用人を友達カウントはどうなんだ?」
「な、ならば……そいつが非番の時に遊んだから……」
結局そいつカウントするのかよ。
「敵を煽りまくる奴同士、気が合うということか」
「まあそんな所じゃない? 絶対認めないだろうけど」
「敵を煽るのは普通のことだろう。少しでも頭に血が上ってもらった方が有利に戦えるからな」
「ああ、自分の実力に自信がないのか」
聞き捨てならない台詞だな……まあ、これで自信がないように見えるんだとしたらかなりヤバいが。
「ないように見えるか? 試してみたいなら今からでも相手になるが」
「止めとけ、これから用事があるんだろう?」
オリヴィエから止められた。つまらないことで問題を起こすなということか。
「それもそうだな」
「何だ、やはり口先だけの卑怯者か」
「ふ、俺を卑怯者か……当たっているよ、その通りだ。だがまあ、この程度で卑怯者呼ばわりは片腹痛いが」
こんな子供騙しの手に引っかかるような魑魅魍魎などの方が奇特な話だ。
「それはどういう意味だ?」
「本物がその気になれば、戦いなど起こり得ないということだ。そろそろ俺は用事を済ませに向かうか。コーヒーごちそうさま」
「い、行ってらっしゃーい」
この時間帯ならナタクは自分の部屋にいるだろうな。さっさと話を聞いてくるか。




