ホテル
「結局本選に出場出来たのは五組か。……半数以上が勝ち上がったのだから上出来なのかもな」
「別に何組が勝ち上がろうと優勝出来るのは一学年一組だけなのだから意味は無いだろう」
「だが本選の参加人数は当初の四分の一、その倍率で半数以上残ったのだから優秀だと言える訳だ。名門としての面目は保ったんじゃないのか?」
予選の観戦を済ませ、本選出場者の確認を終えた。
「これで今日の試合は終わりだな……早く控え室に戻るぞ」
「ああ」
「お前達はこれからどうするつもりだ?」
「近くのホテルで泊まることになってるから、私たちは一度そこに向かうつもりよ」
それなら今日はこれでお別れだな。
「あ、でも泊まるホテルは同じはずですから、またお会いできると思いますよ」
「生徒会がそこまで面倒みるのか?」
「らしいな。気前の良い学園だよ、まったく」
それはすごいな……参加者だけならともかく、直接関係ない奴らまで泊まる場所を用意するとは。
今晩また会えることがわかったので、この場で解散となった。正確には別行動という表現が適切だな。
「皆様、本日は大変ご苦労様でした。今日の皆様のご健闘は我が校の名に恥じない見事な試合でした! 見事予選を勝ち抜いた方々にはますますのご活躍を期待しております」
「それではホテルの鍵を今から配りますので各自管理してください。他に泊まる場所がある方はチェックインの必要はありませんが、一応渡しておきますね。それからこの控え室は退出後鍵をかけてしまうので貴重品等の忘れ物のないよう確認してください」
生徒会長たちの挨拶も終わり、鍵をもらうとそのまま自由解散となった。
「これって一人部屋なのか?」
「各自集中の方法は違うと思ったので本選出場者は一人部屋となっております」
「え? それってつまり、今部屋割りが決定したってこと?」
「はい。本日はロレット学園関係者の貸切にしたので、何か質問がありましたら俺に質問してください」
ホテル丸ごと一つ貸切にしたのかよ……とんでもない金の使い方だな。
「この一大行事にホテルを貸切にするって、暴動が起こるぞ」
「ご安心を、ほぼすべての部屋が使われる予定ですから」
そういう問題ではないと思うんだが。
「どうでもいい、さっさと移動するぞ」
「ああ、そうだな」
忘れ物がないか確認してから控え室から退出した。
「あ! ちょっと待ってくれないかい!」
「……? 誰だあいつらは、貴様の知り合いか?」
不意に呼び止められたが、どうやらオリヴィエの知人ではないらしい。俺達と同じ制服を着た男女のペアだ、平均的な身長の優男とオリヴィエ程ではないがやや背の高い女だ。ちなみに俺も面識はない。もっともどこの誰かはわかるが。
「オリヴィエ……お前本選出場した味方を把握してないのか?」
「……ああ、そういえばいたな。……まさか今から宣戦布告にきたのか?」
「い、いや、そんなんじゃないよ! ただ、おめでとうっていいにきただけだよ!」
「……なぜそんなことをおまえ達に言われなければならない。そんな義理がどこにある?」
いや、別に同級生に対しておめでとうと言うのに義理とかは関係ないような気がするが……いや、もしかしたらつぶし合いになるかもしれない相手に言われる筋合いはない。という意味か? だとしてももう少しマシな言い方があると思うが。
「せっかく挨拶してくれたのに随分な言い方だな。……悪いな、こういう奴なんだ」
「いや、全然気にしてないよ」
「ああ、予想通りの反応だからな」
「そんなことより用件を言え、私達を呼び止めたからには他に何か言いたい事があるのだろう? それともまさか、本当に挨拶するためだけに呼び止めたのか?」
確かにこの後同じホテルに泊まるのだから、話しかけるタイミングはいくらでもあるはずだ。それを待てない理由があるということだな。
「実は色々調べたいことがあって、友達に聞いたら詳しい人がいるって聞いてね」
調べたいこと? あえて我々に聞くからには、この大会のことか?
「聞きたいことだと? なんだ? ……確か……」
「武術科三組の綾瀬隼人、もう片方は魔術科三組のニーア・ルミナスだ。ライバルくらいは把握しておけ」
「そんなライバルだなんて」
「それで? 聞きたいこととは何だ?」
本題を切り出したな。どんな質問をしてくるんだ?




