デュエルは一回勝負
最近前書きを書くことが無く、悪戦苦闘の毎日。
前回はルビの振り方をミスするという体たらく。
これからも前書きを書くことは減ると思います。
「余所見をするとはずいぶんと余裕だな!!」
オリヴィエが再びレイピアを出現させ、俺に攻撃を仕掛ける。
俺は十手で上手く刃の軌道を逸らす。
「お前! 自分が今どんな格好をしているのかわかっているのか!?」
「だからさっさとデュエルを終わらせようとしているのだろう!」
……! 確かにその通りだが。しかし服がほとんど消滅しており、残っているのは白いワイシャツと黒い下着ぐらいのものだ。どうやら下着は消滅しなかったようだ。いや、別に残念ではないが。
とにかくだ。このデュエルさっさと終わらせなければいろいろな意味でやばいな。
「ならば、俺が決着をつけてやる!」
俺はオリヴィエにつかみかかり、そのまま押し倒す。
「クソ! 放せ!」
このまま組み合っててもらちがあかない。俺は関節技に持ち込む。
「やめろ! もうデュエルは終わりだ!」
突然終了の宣言がなされる。問題はその宣言を行ったのが見ず知らずの女によるものだということだ。
「なんだお前は!? ジャッジはどうした!?」
「ジャッジは爆発に巻き込まれて倒れている! それに10分はもうとっくに過ぎた! デュエルはもう終了だ」
掲示板を見るとなるほど、確かに時間は過ぎていた。とりあえず俺の勝ちということか。
俺は関節技を解くと、オリヴィエは力なくうなだれる。
「ゲイル大丈夫か」
返事がない、ただの気絶のようだ。
「大丈夫? 怪我はない?」
また別の女がオリヴィエに駆け寄っている。
「生徒会が、なんの……ようだ」
生徒会? 生徒会の役員なのか、こいつら。校章の色から三年生だというのがわかるが。
「よかった、怪我はないのね。これを着なさい」
そう言うと上着を脱いでオリヴィエにかぶせる。
このあたりからウィルたちもこっちに駆け寄ってきた。
「天蓋君! 大丈夫なの!?」
「ああ、怪我はない」
「け、怪我はないって」
相当驚いているようだ。
……。しまった。あれ程の爆発に巻き込まれて怪我はないだと? 何を言っているんだ俺は。
嫌な汗が背中に流れる。駄目だ。これではもう誤魔化せない。あの状況から、抱きつかれた状態で自爆されたのだ。直撃してないはずがないだろう!
「す、凄いよ! あれだけの攻撃に耐え切れるなんて!」
ウィルの思いがけない言葉に耳を疑う。馬鹿な、至近距離で爆発を受けたんだぞ? なぜそんなリアクションでいられる。
「離れてた俺ですらボロボロだって言うのに。どういう防御魔法使ったんだ? お前」
ゲイル!? もう動けるのか!?
「もしかして、今までマナを温存していたのはこの攻撃を防ぐ為だったの?」
エリーまで……、防御魔法? それを発動してあの爆発から身を守ったと勘違いしているのか?
つまり、まだ誤魔化しようはある。ということなのか。
それもそうなのだろう。魔法を使わずに無事で済むような状況ではなかった。その状況で無事なのだから、何らかの魔法を使用したと考えるのが自然だ。助かった、ここが魔法の世界で。
「お兄様……。何なんです? アノデュエルハ」
カルラ? 怒っているのか? まあ、確かに蛇神の戦い方としては不恰好過ぎたか。
いや、冷静に考えると蛇神以前に男としても相当不甲斐ない内容だよな、あれ。
オリヴィエは、あいつは自分の格好なんて考えずに戦っていた。それに比べて俺はどうだ。相手の見てくれに惑わされただけではないのか? 自分に腹が立つ。
「すまない」
「すまない、ではありません! あ、あんな露出狂みたいな女に誑かされるだなんて!」
「な! 誰が露出狂だ!?」
オリヴィエが驚いたように声を出す。
「貴方は自分が今どのような格好をしているのか理解していらっしゃるのですか!? し、しかも貴方はあろうことか、お兄様に、だ、抱きつくだなんて!? わ、私だってまだ……! その上」
「まてカルラ、あれは攻撃の性質上やむをえないことだ。ああしなければ確実に攻撃を当てることはできなかった。それに服のことにしても苦肉の策なのだからな」
「お兄様!? この女の肩を持つのですか!?」
肩を持つって、事実なんだからそれ以外言うことはないだろう。
「お前、全力で戦った相手にその言い草はないだろう」
「それは!」
「オリヴィエはベストを尽くした、それだけだ。非難されることは何もしていない」
「でも天蓋君、彼女のこと押し倒したじゃないですか。ずるいです……」
さくら? お前何を言っているんだ。
「そうです! ずるいです! 私も要求します!」
「なんで?」
「なんで!? なんでって。それは、その」
カルラは顔を真っ赤にしている。なぜだ、関節技を仕掛けるためにやったことだぞ。それがどうしてずるいになる。
「とにかく、俺は何もずるいことなどしてはいないし、文句があるならデュエルで決着をつければいいことだ。わかったな」
「ずいぶんと強引にまとめたな」
ゲイル、意外と余裕ありそうだな、お前。
「ゲイル、意識があるなら宣言を頼む」
「ああ、そうだジャッジとしての仕事がまだだったな。勝負あり! 素良天蓋の勝利!」
まずは一勝だ。体力も温存できている。次も落とすことはないだろう。
「次のデュエルは少し休憩してから始めるか」
「次? 次って何の話だ」
「デュエルは普通一回勝負だぞ」
「何! デュエルとは三回勝負のことではないのか!?」
周りを見回す。
お前ら何を不思議そうに俺を見つめている。間違っているのはこいつらだろ?
「お、おいオリヴィエ! お前一回勝負でいいのか!? 満足できるのか!?」
「悔しいが、使えるものは全て駆使した。それでこの結果なのだ、私の完敗だ」
オリヴィエ……。そんな。
俺はあまりにものショックに地面にひざをつける。デュエルが一回勝負だと? ふざけるなよ……そんなこと。
「おい、大丈夫か?」
「そんなわけ、ないだろう。こんなんじゃ……満足、できないぜ……」
「重症だな」
他人事みたいに言いやがって。
「とにかく、もうすぐHRが始まる。早く教室に向かえ。風紀委員の私の目の前で遅刻は許さん」
風紀委員の人の言われるがままに、教室へ向かう。いつまでも過ぎたことで悩んでも仕方がない。
デュエルが一回勝負なら、それで満足するしかないじゃないか。そう思うしかあるまい。
こうしてデュエルの幕は閉じた。これから最初の授業が始まる。せいぜい楽しむか。




