表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩天蛇神の秩序維持  作者: てるてるぼうず
69/3202

鎌捌き

「やっと試合開始か」


 ジャッジの宣言の直後、突如として強大な爆発が相手二人に襲いかかった。オリヴィエがプロミネンスを発動したのだ。


「こんなチンケな魔法でこの俺様からダウンをとれるとでも思ってんのか!」

「オリヴィエ、あなたがそうくることはわかっていました。少しは成長したらどうです?」


 ゼノバはバリア? とでも言えば良いのだろうか。とにかくバリアのようなものを張り巡らせ、爆発から身を守っていた。

 フィリパはプロミネンスの発動と同時に分身魔法ミラージュアタックを発動し、回避していた。攻撃を控えるとか言いながらミラージュアタックというのは如何なものだろうか? 確かに攻撃ではないが。


「私は三分程動くことが出来ない。肉弾戦は任せたぞ」


 何でもいいが作戦通りに頼むぞ。俺は一気にフィリパと間合いを詰め、真贋構わず滅多切りにした。


「何!? 貴様、何故俺様に攻撃してこない! さてはこの俺様に畏れをなしたな!? この卑怯者が! フィリパばかり攻撃しおって、男として恥ずかしくないのか!」


 一分間動かない相手に何故わざわざ攻撃を仕掛けなければならないというのだ。それよりまずはこの女を少しでも消耗させるのが優先だろうが。


「おっと! 天蓋選手、ゼノバ選手には目もくれずオリヴィエ選手と共にフィリパ選手を集中攻撃だー!」

「これは騎士道精神に反する行為です! どう思いますかアリシアさん」


 別に騎士道精神なんて初めから持ち合わせていないからな。もし仮に騎士道精神溢れる大会があったならば、その優勝者は間違いなく王族か女性になってしまう。


「タッグデュエルである以上二対一の状況は良くあること。むしろ常套手段と言えるな。ゼノバへの攻撃を度外視してでも、少しでもフィリパの魔力を削るつもりなのだろう」

「なるほど! 一分間行動しないという挑発に対し、普通なら動く前に倒そうというのが人情! それを彼はコペルニクス的転回の発想により、逆にゼノバ選手を一旦無視してフィリパ選手への集中攻撃に専念。一分間待ってくれるなら一分間待ってもらうという逆転の戦略に打って出たー!」


 こいつらの仲はあまり良くない。それならば下手に一人だけにするよりもタッグデュエルを強制させた方が足を引っ張り合ってくれるかもしれないからな。

 ……この世界のコペルニクスも発想を転回してるのか。


「随分と鎌を一心不乱に振り回すのね。単調でとても退屈よ」

「それなら技の一つでも見せてやろう……アキレスブレイク」


 姿勢を低くし足首へ目掛けて刃を突き立て、次の標的にも同じく切り裂き続ける。今ので六人のフィリパのアキレス腱が切断された訳だが、結果的にはその中に本物はいなかった。


「やっと本気を出してくれたかしら?」

「まさか、まだまだ様子見ですよ」


 本物と偽物の区別も付かないのに手の内を晒すのも間抜けな話だからな。そもそもこの女はオリヴィエが範囲攻撃することで対応すれば良い。


「余裕がありますね。棒立ち人形がいるのにそちらへは攻撃しなくていいのですか?」

「二秒で倒せる相手が一分も動かないんだ……それはつまり58秒は貴女への攻撃に専念できるということだろう」

「そんなわずかな時間でこのわた……」


 私という単語を言い終わる前に凄まじい轟音と衝撃波がフィリパ選手に襲いかかって来た。俺諸共巻き込んだその爆発は、流石に予想できなかったのか見事に命中し、地面へと横たわってしまった。

 しかし、そのフィリパ選手は分身体だったようだ。地面へ這いつくばったまま幻のように消え去ってしまった。

 言葉まで話せる程の精巧な分身とは恐れ入ったな。


「……そんなわずかな時間でこの私を追い込むことが出来るのですか? と、言いたかったのですが……まさかこんな方法で真贋を確かめようとするとは。念のために分身体に会話をさせていて助かりましたよ」

「流石ですね。やはり一筋縄で上手くいくと思ったのが甘過ぎたか……」


 だがこの人の分身魔法が相当高度なコピーを出現させているのもわかった。この分身体もオリジナル相当の攻撃が可能と考えるとなかなか素晴らしい相手だな。


「落ち込む必要はありませんよ。こんな攻め方は私も初めてでしたから。……その衣装、特注品ですね?」

「やはり見る目が違うな。その通りこいつが着ている衣装は……」

「特注だとわかればそれ以上話すことなどありませんし、そもそも貴女には聞いていません」


 ばっさり切り捨てたな……オリヴィエも眉間に皺を寄せている。これは相当不機嫌な証拠だ。


「お、おーっと? どうやら何らかの駆け引きがあっとようです。私にはオリヴィエ選手の魔法が味方に誤爆したようにしか見えませんでしたが!」

「分身の精度にあたりをつけにいったのだろう。コピーが流暢に会話する必要はないはずだから会話中のフィリパが本物である可能性が高いと判断し、自分ごと巻き込むよう爆破しろ。と事前に打ち合わせていたのではないか?」

「あれほどの爆発を、ですか!?」

「そのための特注品なのだろう。少なくとも一撃やそこらは耐えきれるほどの強度は持っているはずだ」


 残念ながらこの衣装でなくとも防げるがな。とは言え着ている服が黒こげになるのを防げるのはありがたいが。


「それではあの格好はただの見かけ倒しではなく、作戦の一つだと?」

「ああ、挑発と見せかけて相手に対し、考えられるだけの準備を服装の段階でしている。口調とは裏腹に相当強かなチームだな」


 それは過大評価だな。オリヴィエも俺もそこまでの事は考えていない。まあ、オリヴィエは少しでも強度の高い服を用意するタイプみたいだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ