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崩天蛇神の秩序維持  作者: てるてるぼうず
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「そう、彼女と組むことになったのね?」


 休講となり、大会に一緒に出場する人も決まったのでとりあえずクラウディア先輩のところへ報告をしに行くことになった。

 あの人がいる可能性の高い所はやはり剣術部しかないと考え、そこへ向かう。案の定そこにいたので報告した。


「はい、俺とオリヴィエなら優勝も狙えるだろうと判断しました」

「順当に考えるなら彼女よりむしろ妹さんの方がいいんじゃない? 呼吸も合いそうだし」

「そうですよね!? やはりそう思いますよね!?」


 突如としてカルラが異様な勢いで食いついていく。その勢いたるや獲物に飛び掛る猛獣のような、こいつの場合は猛禽類だが……とにかくそれほどの勢いで食いついてきた。


「え、ええ、そうね」


 流石の先輩もその勢いに気圧されたのか、やや困惑気味に相槌を打った。


「そうでしょう! そう思いますよね!」


 さらにカルラはヒートアップしていく。


「落ち着けカルラ」

「私は落ち着いていますよ!」

「そうか、なら話を続けるが、わざわざ俺達が二人同時に出場する必要もないだろう。お前は次あたりの大会に参加したらどうだ?」

「そんな!? ……そんなぁ」


 顔を真っ赤にしながら、泣き始めてしまった。


「泣くことは無いだろう」

「ねえ、なんでそんなに妹さんと組むのを避けようとするの?」


 避けるもなにも、むしろこいつ一人いれば優勝するから俺が組む必要ないんだよな。


「だってこいつ温存した方が何かと有利だと思いますよ?」

「まあ、貴方とオリヴィエなら十分優勝も狙えるわね」

「それに剣術部員として出場するつもりですからね。流石に生徒会役員のカルラを巻き込むわけにもいかないでしょう」

「ちょっと待て、つまり私は巻き込んで良いとでも言うのか?」


 そこまでは言わないが。


「どうせ暇だろ?」

「確かに暇なことは否定しないが。……まさか私も入部しなければならないのか?」

「大会が終わったらその都度辞めて良いらしいから問題はないと思うぞ」

「その都度って複数回参加するのか」


 とりあえず二回は優勝を飾りたいところだからな。


「とりあえず俺はな」

「そうか」

「そういうわけで今度ここへ来るときは入部届をもってきますね」

「ええ、わかったわ」

「おいカルラ、そろそろ生徒会室に向かうぞ。……いつまで泣いているんだ」

「だって……私だって」


 尚も涙目でぐずっている。


「なあカルラ、何故そこまで俺と組みたがるんだ?」

「え? なんでって……それはその……」


 途端にカルラの目が泳ぎはじめる。


「どうした」

「兄妹で仲良く戦いたいんでしょう?」

「そうなのか?」


 カルラは何もいわずそのまま黙って頷く。


「そうか、だったらなおさらお前とは組めないな」

「な、何故です!?」

「簡単な話だ。俺は今回の件で誰かと仲良くするつもりは毛頭無い。お前ならもう勘付いていると思うが俺が風霊祭に参加するのはクラウディア先輩に対して礼があるからだ。言い換えるなら俺はこの人の為に優勝を目指す。自分の為では無く他人の為に戦うんだ、仲良くなんてことはあり得ない」

「この人の……ため……?」


 なんだその愕然とした顔は? 俺が誰かのために戦うなんてそう珍しいことでもないだろう。


「……え? そんな私のためだなんて……」


 貴女も何故顔を赤くさせているんです? 礼をする以上相手の為だということはわかりきったことでしょう。


「ま、待ってください。貴女お兄様とどういう関係なんですか!?」

「『現状』は先輩と後輩よ? これから部長と部員という上下関係になるけど」


 その上下関係はすぐに解消されますがね。


「そんなこと聞いていませんよお兄様!」

「わざわざ言わなくてもいいだろう。受けた恩を返す、それ以外に理由が要るのか? 恩を返すのに理由が必要なのか?」

「それは、そうですが……本当に恩を返すだけなんですね? 他にやましい気持ちはありませんね?」


 やましい気持ちってなんだよ。さてはこいつ俺のこと信用してないな? まあ、普通にハニートラップとか引っかかるし、そもそもそれが原因で一回死んだ事があるから信用されないのも理解できるが。


「大丈夫だ、やましい気持ちは無い。俺が恩返しに不純な動機を混ぜることは無い」

「……わかりました」


 それだけ言うとカルラはそのまま大人しくなった。


「私としては別に不純な動機が混じってても構わないわよ?」

「こっちの事情ですので」


 それだけ残し俺達は生徒会室へ向かった。


◆◆◆◆◆


「……では今日は生徒間で喧嘩があったらそれを強制的に阻止しろと」

「ええ、今日は一日休講で生徒一人一人の動きが不規則になっている上にその休講の理由が理由だから……魔術科で何か波乱が起きる可能性が高いといえます。ですので貴方にはその監視を頼みます。幸いにも貴方とその渦中の人とは友人である上に、貴方もその当事者のようなので」

「わかりました」


 俺達が生徒会室に移動して会長からの指示を仰ぐと、騒動が起きそうなのでその監視をしろとのお達しが来た。

 俺はその命令どおりに魔術科へと向かって移動する。


「ちょっと待ってくれないか」


 突然ナタクに呼び止められた急なことなので驚いたが、わざわざナタクが俺に話しかける以上何か重要なことなのだろう。


「どうしましたナ……上杉先輩」

「少しだけ話があるんだけど……良いかな?」

「勿論構いませんが」


 そういうわけで俺とナタクは魔術科のゲイルのいる教室へ向かう前に話をすることになった。


「話とはなんです? 今朝の新聞ですか?」

「いや、まあ、そんなところか……それから二人のときは敬語じゃなくても良い……いえ、構いません。話しやすいようにお話ください」

「わかった」


 話とはいったいなんだ?

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