表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩天蛇神の秩序維持  作者: てるてるぼうず
47/3284

変化

 時間とは早いもので、初投稿から2ヶ月経ちました。

 これからも頑張ります。

「よし、そろそろ着替えるか」


 俺はズタボロになった制服を脱ぎ捨て、修道服へと着替えた。この制服も十分役に立ってくれたな。替えの制服は学園に戻るしかない。ということは、帰りはこの服装で学園に帰ることになるのか。しかも制服なんて何着も用意していないからな……。学園に戻ったらまずは予備の制服を買いなおすか、それともいま脱ぎ捨てた制服を直すかのどちらかだな。


「……後で考えるか」


 結局制服をどうするかの選択は先送りにした。

 屋敷の前に立つ。恐らく今頃アレンさんが交渉人として彼らに連絡を取っているころだろう。今のうちに誰にも気づかれないように二階に侵入して、あの賛歌を流さなくてはな。


「これか?」


 時計台の中の装置を調べると、なるほど、色々な装置がたくさん内蔵されている。録音装置はこの大き目の箱? のようなものだろう。その証拠に小型の時計から延びているコードが途中で切断されており、そのコードと同じ太さで、かつ途中で切断されているコードが大きめの箱からも延びていた。それになんらかの動力炉らしき物と連動しているのがわかる。

 後はこれを再生させれば……。


「よし、ちゃんと流れたな」


 賛歌が流れていることを確認し、俺は満を持して一階へと向かった。もともとは一人になったところを生け捕りにしようと考えたが、時間的制約が存在するこの状況でそういう偶然に頼るのは非常にリスクが高い。一か所に籠城されたら手出しできないからな。

 そう考えると自分から人質になったのは失敗だったか? このまま現れたら幽霊じゃないと一目でばれてしまう。しかし中の様子がわからない状態で人質を危険に晒すようなことも出来ないのも確かだ。なにせ俺はここへ来る前にあの紳士に穏便に済ますと約束したからな。約束した以上果たさなければなるまい。

 何はともあれ、階段を下り、彼らの前に立ちはだかった。もちろん自身の正体を隠すために一時的に蛇神の姿へと変化して……だが。

 実際のところ俺の本来の姿はどちらかというとこっちの姿なんだから、仮の姿を隠すために本当の姿を曝け出すという意味不明な状態になるのか。どうでもいいか。


「な、なんだこいつは?」


 誘拐犯達の第一声は疑問の声だった。まあ、今まであったこともない奴が唐突に現れたんだから自然な反応か。


「その服装、殉職者って奴か? まったくここまで手の込んだ真似をするとはねぇ」


 おっと早速ばれているのか。いや違うな、そもそもはなから信じてないなこいつ。だったら信じさせてやるか。


「へ、なんか言ってみたらどうだ? そんなに肌を黒く塗りやがって。焼死体って設定か? おお?」


 なるほど焼死体。そういう設定も有りだな。確かにそれなら実に非業の死を迎えたと言える。


「どうでもいいことだ。さっさとこいつ殺して交渉人に文句つけてやろうぜ? こんななめた真似してきやがったんだ」


 残念だが今日ここで死人は出ないよ。何故なら俺が生け捕りにするからな。

 俺は何も言わずに黙って奴らに近づく。


「莫迦が! そんなのろまの木偶の坊を刺客になんて百年はえーよ!」


 そう言うと彼らから大量の魔法が飛び出してくる。……さて、まずは誰から捕らえるかだな。この中で一番冷静な判断ができそうなのは誰だ? 或いは一番厄介な魔法を使う奴だな。

 そう考えていると、自分の目の前に信じられないものが現れた。なんと自分そっくりな姿をした奴が突然現れたのだ。


「一体何者だか知らないけど、一人で来たのは間違いだったねぇ。ボクの魔法には絶対にかなわないよ? 自分自身に勝てるわけないもんねー!」


 この少年の魔法だったか。もし俺の記憶や思考までコピーしているとしたら非常に面倒だな。まずはこいつから処理するか。

 俺はその少年に掴み掛かろうとするが、コピー体から攻撃を受けた。

 さらにだめ押しと言ったような勢いで他の誘拐犯達から袋叩きに遭う。


「やったか!?」


 そう思うなら次からは俺の姿を覆い隠すほどの派手な魔法は控えるんだな。


「え……? 無、傷?」

「こいつ! 全然効いてねえぞ!」

「邪魔だ! どけい!」


 大男からの右ストレートが俺の鳩尾に直撃する。申し分ない威力だが、この程度でよろけていたら蛇神としての沽券にかかわる。


「な、なんだこいつ!?」


 俺はさっさと少年の頭を掴み上げると、この部屋から退出することにした。


「がっ……! あっ」

「て、テメェ!」


 大男から強烈無比なドロップキックを受ける。あれほどの巨躯の持ち主でありながら素晴らしいまでの身のこなしだ。だがその巨大にして、強靭な肉体を存分に駆使した攻撃すら今の俺には通用しない。さっきまでの俺ならば、体重差で転ばすことも出来ただろう。実際この男は俺を投げ飛ばしたことがある。しかしそれは、あくまでも俺を肉の塊とみなして物理的に投げ飛ばしたに過ぎない。残念だが今の俺にはそんな攻撃は効かない。

 そういう意味では、さっきまで俺を攻撃していた俺の偽物も惜しい話だ。コピーの精度は決して低くはない。惜しむらくはこのコピー体がコピー出来るのは、自身が確認したものだけだということだ。もしすでに俺のすべての力がコピーされているのだとしたら、もっと効果的な攻撃を加えてくるはずだ。それをしないのは俺がまだその力を披露していないからか。

 そして一番の問題は俺自身が防御寄りのタイプだということか。自身の攻撃で有効打になりそうな技は恐らく無いな。

 ……まあ、コピーの限界地点に興味が無い訳ではないが、流石にそんな時間は無い。そもそも本気で攻撃を仕掛けたらここにいる全員が死ぬ。て言うか、この少年が苦しんでいるせいか、俺の偽物が原型を崩し始めている。自分自身のスプラッターを見せつけてくるとはなかなかアジな真似をする奴だ。


「クソ、この化け物!」


 おい、これから魔王復活を祈願しようという奴らがこの程度で化け物呼ばわりか? そもそも化け物が怖いなら始めからこんなバカなまねなどせずに、平穏に暮らしていれば良かったんだ。 


「ひっ……、た、助け……」


 諦めろ。助けはない。おまえ達が泣こうが喚こうが俺がこれからやることに変わりはない。

 少年の悲鳴と共に、部屋から退出した。

 部屋の扉を閉めた瞬間、急いで少年の気を失わせ、窓を開けて外へ脱出。二階の時計台の部屋へ外側から侵入し、すぐに録音機の再生を止める。

 これでいい。次はこいつを外の奴らに渡そう。

 ……ん? よく見たら服が濡れているな。そういえば俺の服も。あの中に水魔法を使った奴がいたのか。足元を見てみると、水滴が足跡のように滴り落ちていた。これはまずい。このままでは窓から外へ出たことがバレてしまう。乾かすか。

 よし、これでもう大丈夫だな。服も完全に乾いたし、これで気持ち良く行動できる。職業病というやつか、すっかりジメジメした場所が受け付けなくなってしまったな。

 まあ、どうでも良いことか。外の奴に……、ああ、そうだ。人間の姿に戻らなければな。


◆◆◆◆◆


「そこにいたか」


 俺は外で待機していた騎士の一人に話しかけた。屋敷の奴らに気付かれないように隠れているようだった。


「よくここに隠れているのがわかったな」

「昔から煙草の臭いが嫌いでしてね。本当に隠れる気があるなら自身の匂いも消した方が良いですよ」

「まじかよ、俺そんなに臭うか?」


 騎士のおっさんが自分の袖の匂いを嗅ぎ始める。


「そんなことより、一人捕まえてきましたので渡しておきますね」


 肩に担いでいた少年を渡すと、騎士のおっさんが険しい顔を見せた。


「まだガキじゃねぇか。こんな犯罪に巻き込ませるなんて」

「思うところはあるでしょうが、その場限りの情けは控えてくださいよ。頑是無い子供はむしろ何をしでかすかわからない。それにその少年は敵そっくりの偽物を作り出す事が出来ます」

「ドッペルゲンガーかよ。末恐ろしいガキだな」


 ドッペルゲンガーという魔法だったのか。


「じゃあな。俺はこいつを向こうへ運ぶ。あんたも気をつけな」


 それだけ言うと、騎士のおっさんはどこかへ少年を担いで行ってしまった。

 俺もすぐに屋敷へと向かい、再び蛇神の姿へと変身する。


「グッ……、ガアッ」


 おかしい。何故か姿を維持出来ない。変身しようとすると、どんどん蛇へと近づいてしまい、ヒトガタを保つことが出来ないのである。


「……! まさか、煙草のせいか!?」


 確かに蛇は煙草のヤニを嫌うというし、俺も煙草は嫌いだ。しかしこんなことは今まで一度もなかった。タバコの煙を少しでも吸うと、鼻の頭に血管が浮き出る。なんともマヌケな話しだが、いや、嘘じゃないからマヌケではないのか?

 とにかく、あれぐらいの臭いならば、その程度の拒否反応が起こるだけだったはずだ。やはり人間に転生したことでいくつかの能力が低下していたのか。

 やむを得ないな。しばらくどこかで身を隠し、落ち着くのを待とう。


「素数……いや、意味ないか」


 一瞬素数を数えれば自分に勇気を与えてくれるような気がしたが、すぐに思い直す。それもこれもこんな服装をしているからそんな気がしてしまうのだろう。

 自分の手のひらを見ると大分安定しているのがわかる。そろそろ再開するか。

 屋敷の二階に侵入しようとした時、人の気配があることに気付いた。時計台の部屋に三人だけ上ってきているようだ。部屋の中で何か会話をしているようだが、残念ながら聞き取ることは出来なかった。しかし、どうやら何かを物色しているようだ。

 部屋から気配が消えた。ほかの部屋へ移動したのだろう。とにかくチャンスだ、はやいとこ讃歌を再生せねばならない。

 時計台の装置を確認しなければ。録音機が壊されたら別の物に取り換えなければならない。

 どうやら無事のようだな。じゃあ再生するか。讃歌を流し始めた瞬間、隣の部屋から強い気配を感じる。殺気のする方を向くと、二刀流の剣士が俺の首に切りかかってくるのが見えた。

 良い剣だが、俺の肌に傷をつけるには及ばないか。横から斧が直撃してくる。そして続けざまに雷撃が俺の体に流れてきた。

 よりにもよって俺に電撃を喰らわせるとはな。面白い奴だな、お前を生け捕りにするのは最後にしてやろう。

 俺は三人の中から一人を捕まえて隣の部屋へ移動する。この部屋に人がいると讃歌を止めることが出来ないからな。それに、三人同時に捕まえても外の奴らが捌き切れないのだから、やはり一人だけだな。

 別の男に足を掴まれたが、構わず右手に捉えた男を合わせて二人を引きずりながら歩き続けた。大男から掴まれたので、余った左手で投げ飛ばし、足にしがみついていた奴も振りほどき窓から脱出した。

 窓から飛び降りた瞬間に超スピードで時計台の部屋へ移動し、曲を止めた後部屋の明かりを消した。その後更なるスピードで屋敷から再度脱出し、外の奴に渡しに行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ