デュエルスタンバイ!
いまだに入学式の一日が終わらないのは流石にヤバいなと思い始めています。
「なんか、疲れたわ……すごく」
俺だって疲れてる。
「こんなかわいい妹がいるとかふざけんなよ……。もしかして他にもいるのか? かわいい妹」
なんで妹限定なんだ。
「見当もつかないな、そもそも兄弟姉妹全員を把握できていない」
「いやいやある程度はわかるだろ」
「例えば俺の義兄が結婚したらその相手は俺の義姉になるんだぞ、現在進行形で増えている可能性もあるのに断定はできんよ」
「とんでもない家族だな……」
そこは否定できないな。
「で、でもすごいですよ! 妹さんが代表挨拶するなんて! トップの成績で合格したということですよ!」
フォロー入れているつもりなんだろうが、それだと俺が妹より成績が下ということになるんだよな。事実だから仕方ないが。
「いえ、私なんてお兄様と比べたらとても……本来ならば」
「ちょっと待て、俺そこまで成績が良いわけではないからな」
変なこといい始めたので急いで止める。本来ってまさか転生前のことを言っているのか?
んなわけねーだろ。学園側から入学どころか入試の時点で拒否られるだろ、常識的に考えて。
「そんな謙遜を」
「いや筆記試験とか地理歴史捨ててたし。トップとか絶対無理だぞ」
「やっぱお前も地理歴史捨てたか。あれ難しいもんな」
「……精霊魔法つかうのに捨てたのか、地理」
本来得意科目なんじゃないのか。地形によって戦略が変化するんだろ、精霊魔法って。
俺の発言にゲイルは非常にばつの悪い顔をしている。
「い、いや俺の場合? 自分の得意なフィールドで戦えばいいわけだし? 君子危うきに近寄らず? みたいな?」
目が泳ぎまくっているな。近寄るべきではないフィールドの知識があるからこその言葉じゃないのか、君子危うきに近寄らずって。
「そういえば、不思議に思っていたことがあるんだけど、聞いていい?」
エリーが俺に質問してくる。
「なんだ」
「なんで最初に言わなかったの? 俺の妹だって」
「どういうことだ」
「だって代表挨拶してたじゃない、理事長の長い話の後」
「いや、気がつかなかった」
「まさか寝てたの?」
いや寝てたわけではないが。でもしかたないだろ、隣に座るのがウィルとかならともかくさくらが隣に座ったんだぞ。普通意識するだろ。ああ、流石に話を聞いていないのはまずいか。
「……」
「な、なんでしょう」
カルラがじっとさくらを見つめている。
「失礼ですがお兄様とどのような関係でしょうか?」
「か、関係ですか?」
こいつ入学式当日に何言ってんだ。さっき知り合った以外に何がある。
「え、えっと」
「さっき知り合ったばかりだ、関係もなにも無い」
「本当ですね……?」
一体何を疑っているんだ?
「わかりました。ところでお兄様、この後何かご予定はございますか」
「何もないが」
「それでしたら私と一緒に学園を見学しましょう」
しまった、完全に忘れてた。そうだよ何教室の確認もしないで学園の外を散策するつもりになってたんだ。別に明日でも良い気がしてきたが。
「あ、あの! わ私も一緒に付いていっても良いでしょうか!?」
「……? わざわざ別行動する必要もないだろう」
「えっ」
「え?」
あれ? 俺変なこと言ったか? カルラが非常に不服そうな目で俺を見つめてくるが。いやここで別行動は不自然だろう。
「何か言いたいことでもあるのか?」
「……何でも……ないです」
そうか、それならさっさと学園を一周して寮に行こう。今日は疲れた。
しかし、そんな俺をあざ笑うかのように新たなる騒動が俺たちに襲いかかる。
「見つけたぞ、金翅鳥カルラ!」
俺達の、正確にはカルラの前に仁王立ちして大きな声で呼びかけてきている。その声の持ち主は銀色の長い髪と鮮やかな赤い瞳、そして雪のように白い肌をしていた。つり上がった眼は彼女が厳しい性格であること、眉間にしわが寄っていることと先程の言動から、カルラに敵対心を持っていることが窺える。
「知り合いか?」
「いえ、初めてお会いしたかと」
「そうか、お前等はどうだ?」
「あ、ああ。一応知ってるが……まさかこの学園に入学していたとは……」
「様々な大会での優勝を経験している天才少女、オリヴィエ・ヴィンクラー、ついでに言っておくと、名門貴族のご令嬢よ」
なるほど、どういう人物なのかは理解したが、なぜカルラに絡んでくるんだ?
「ふん、この私を差し置いて生徒代表に選ばれたというからどんな傑物かと思ったら、こんな締まりのない顔をした女だとはな」
「そんな顔などしていません!」
いや、結構気の抜けた顔してたぞ。
「まあいい、入試での成績だけで私に勝った気でいるならば10年早いということを教えにきただけだ」
「あの、今お会いしたばりで勝ったも負けたもないのでは」
「黙れ……! 入学式早々六人も友達と一緒にいるなんて……話しかけるのにどれほど勇気を振り絞ったと思っている!!」
すごい関係ないことで怒ってるな。
「とにかく! 私と貴様どちらが最強の名に相応しいか決着をつけさせてもらう!」
「勝った負けたは10年早いんじゃないのか」
「う、うるさい! 貴様には関係のないことだろう!?」
「……わかりました。お相手いたしましょう。お兄様を貴様呼ばわりしたこと、たっぷりと後悔してもらいます」
こいつも相当ズレた怒りだな。
「お兄様? それにしては似ていないな。まあいいか、本来代表挨拶すべきだったのはこの私なのだとここではっきりさせてやる」
「それは私でもなく、貴女でもありません。お兄様が……」
「おい、何このタイミングでとんでもないことを言ってんだ!?」
なんでお前がケンカ売られているのか解って言ってるのか!?
「何? ……貴様より兄の方が優れているというのか」
食いつくな。
「当然」
どや顔やめろ。
「ならば私の相手は貴様だ」
「断る。俺は面倒が嫌いなんだ」
「黙れ! 私と決闘しろ!」
「デュエルだと? この俺にか……、面白い受けて立ってやろう。ゲイル! ジャッジは任せたぞ!」
「えっ俺がやんの!?」
「面倒は嫌いだって」
「喧嘩ならば買う気など毛頭無いが、決闘だというならば話は別だ」
「デュエルは明日の朝8時、HRが始まる前だ、アリーナで待っている」
「了解した」
こうして俺の転生後初めてのデュエルは決まったのである。
寮に戻ったら早急に準備を整えなければな。




