どちらが干渉を受けているのか?
「なるほどな。同じ難易度の封印魔法であっても、内側と外側で時間の流れが違うのであれば、解除の難易度は大きく変わるだろうな。何せ封印された側が数分で解除したと認識していたとしても、外側の世界じゃ数日経ってたとかそういう事もありえるんだろ?」
「そうだね。だけどそれをもっと極端にしたのが魔王に対して発動したとされる究極封印魔法……その術の最大の特徴は内側と外側の時間の流れの差が限りなく無限に近いとされているね」
「無限だと? それじゃあ、一瞬で解除したとしても、数百年間経過しているとかそういう状況になるって事か?」
まるで浦島太郎だな……いや、本人視点だと一瞬で未来へワープしている感覚になるだろうから、どちらかと言えばタイムマシンか?
「言っちゃえばそういう事だね。この術の最大のメリットは何と言っても、対象に対して実質的にゼロ時間しか干渉していない事になる点だね。ゼロ……つまり当たっていないとさえ言っても過言じゃない封印魔法だよ」
「当たっていない……なるほどな? 仮に魔王がいかなる魔法も無効化してしまう特異な存在だったとしても、そもそも魔王には一瞬たりとも干渉していないんだから関係ないって事になるわけか」
「そうだね。そして、その術の難易度と実際に得られる効果から、専門家の中にはそもそも封印術なんかじゃ無くて時間を加速させる魔法なんじゃないかって考えてる人もいるくらいだね」
「時間の加速か……? 時間の流れに差がある場合、それは封印を受けた側が影響を受けてるのか、それとも封印された側こそが保護を受けていて、それ以外の全てが影響を受けているのか……? どっちの現象が起きているのかわからないって事か」
まあ、調べるのはほぼ不可能と言えるだろうな。これを計測するには、封印の外側でも内側でもない第三の空間から客観的に時間の流れを観測する必要が出て来る。そしてこの計測方法の最大の問題点は、第三の空間を用意する事では無く、その第三の空間に時間が流れているのか? 別空間から計測したデータが本当に信頼出来る代物なのかどうか全くわからないという点だ。
「まあ、直感的に考えるなら魔王の方が術の影響を受けていると考えるのが妥当なんだけど、だとしたらゼロ時間しか干渉していないって点と矛盾するんだよね。それなら魔王以外の全てを対象としていると考えた方が筋は通ってるような気はするよね」
まるでカードゲームの仕様みたいな攻略法だな。
「一見筋は通っているようにも見えるが、その仮説が正しいとすると魔王以外の全てにはその術が通ってる理屈になるぞ? 魔王以外に魔王みたいな存在はあり得ないのか?」
「そこなんだよね、この説の証明が難しいのは。まあ、そこは人類が無効化されている事に気が付いていないだけって理屈で説明出来なくも無いんだけど……結論ありきの理論ではあるよね」
まあ、そもそもその理屈が通るんだったら、伝説の勇者様一行は魔王と戦う必要性が最初から無かったって話になるからな……そんな事せずにさっさと時間加速で魔王を置き去りにしてしまえば良かったって結論になってしまう。




