解体業者
「証拠って簡単に言うが……そんな簡単に手に入るものか? 角とか牙にしたって解体するのには技術が要るぞ」
モンスターを倒す事は可能な者もいるだろう。だが、それに加えて倒した証拠を確保するとなると難易度は一気に跳ね上がる。戦闘技術だけでなく解体技術まで求められる事になってしまうからだ。本当に倒せるかどうかもわからない段階で解体業者を呼ぶのも無駄だし、倒した後で呼ぶのにも連絡方法を考えるのも大変だ。しかし、自分自身が解体技術を身に着けるなんてのは論外と断じて良い程の労力だ。
「まあ、そのせいで無駄に討伐の難易度が上がっちゃうからって理由でほとんど形骸化している取り決めらしいね。それに、この取り決めだって不正は出来ちゃうし」
「モンスターの死体を解体する技術があれば、死体を見つけるだけで良いわけだからな。なんだったら、表向きは解体業者として振る舞えば済む話だ」
解体業者として仕事をして、討伐の依頼が出ているモンスターの死体を見つけるか、その解体を依頼されたら、どさくさに紛れて証拠になりそうなものをネコババしてしまえば良いだけの話だからな。ハイエナ行為をされたら証拠の意味が無くなってしまう。
「それも横行したね。結局は水掛け論になって、規模の大きいギルドにそれをやられたら弱小ギルドはどうしようもない。結果として対人戦や大衆操作が得意なギルドが成長して、対モンスターに特化したギルドが衰退するって言う目も当てられない状態になった事も割と最近あるよ」
「最近あるのか? どうしようもないな」
人類同士で足を引っ張り合ってモンスターに良いように暴れられるってのは、関係無い奴からしたらやってられないな。




