モンスターを見た事が無い人もいる
「お互いに協力し合えないって点でモンスター達に良いように動かれてるのは確かだね。協力し合う事が出来れば……って言われてるけど、それでもしも上手く討伐出来たら、今度は国同士が隣接する事になるから、また軋轢が生まれるんだよね」
「奇しくもモンスター達が国家間同士の緩衝材になっているわけか」
仲の悪い国同士が隣接していればいつ戦争になるかわかったものでは無いが、そこにモンスターという両者にとって共通の敵が挟まる事によって迂闊な行動が取れなくなってしまったわけだ。モンスターの討伐にだって戦力というリソースを割かなくてはならない。リソースを割いてせっかくモンスターの討伐に成功したとしても、それによって疲弊し、モンスターがいなくなった事で安全に通りやすくなった道を利用して進軍する事を許してしまったら大打撃を受けてしまう。これでは敵に塩を送るようなものだ。
「まあ、緩衝材って言うか、戦争が泥沼化して前線が乱れる程モンスターからの襲撃に遭いやすくなって占拠されていくわけだね」
「そうなるのがわかっているなら、戦争なんてしなければ良いんじゃないか?」
「そんな単純でも無いんでしょ? そもそも戦争するのは国境線上だけど、命令は国の安全な場所から出されるんだし」
まあ、戦争を実際にやる奴とそれ指示する奴は別人ってのはその通りだが……それが原因でモンスターに付け入る隙を与える事になるのか?
「安全な場所と言うが、モンスターの危険性は周知されてるんだろ?」
「どうかな。モンスターが潜んでいるのは基本的に辺境の地だし、そのせいで都じゃモンスターを一度も見た事が無いって人もいるらしいよ」
なるほど、モンスターの危険性を理解していないわけか。確かにそんな調子じゃ仲の悪い国と協力してモンスターを討伐しようなんて発想にはならないだろうな。




