食うには困らない
「まあ、繁栄する事を最優先とするなら強さは要素の一つにしかならないだろうな」
仮に最強無敵の捕食者が存在したとしても、食料となるエサが無くなってしまえば餓死する他無い。
「別に弱くても繁殖に成功している生き物なんて山ほどいるしね」
「そういう生き物としての常識と言うか……ルールみたいのが通用しないわけなんだな。つまりは自然界の摂理を無視しても問題無いくらいの強みがあるってわけだ」
どんなに強くても、天性の捕食者でもエサが無きゃ餓死は免れない。狡兎死して走狗烹らると言う奴だ。逆に言えば、現代でもドラゴンが君臨してると言うなら、それはつまりその環境がドラゴンが存在しても遜色ないくらいに強靭な生物で溢れ返っているか、もしくはドラゴンでさえ食い切れない程に飽食の世界かのどちらかだ。あるいは、ドラゴンが人間の常識では信じられない程に小食と言うか、省エネで活動できる生き物かだな。
「まあ、生き物として欠陥まみれでも繁栄しているのなんていくらでもいるからね」
「そういう意味ではドラゴンは繁栄出来るだけの何らかの理由がある事になるな。牙や爪が生えてるって事は肉食性なんだろ? そんなにエサに困らないくらい生物に溢れてるのか? それとも一週間くらいなら絶食しても問題無いくらい代謝が緩やかなのか?」
「両方そこまで外れてはいないね。例えばドラゴンの中には火山の火口付近に棲み処を作る種もいるけど、ドラゴンの飛行能力を考えたら十分近場にエサが歩いている事になるだろうし、巨体なら巨体な程保温効果も高いだろうから一日の大半が食事時間なんて歪な生態にはならないだろうしね」
まあ、一日の摂取カロリーよりも消費カロリーの方が多かったら痩せるってのが道理だからな。特に天敵がいない環境なのであれば、飛行距離も相まって食うには困らないわけか。




