そもそも強さは重要じゃない
「ふーん……まあ、両方出来るって意味ならカブトムシとかも空飛べるからね。……カブトムシの飛行能力がどんなものなのかなんて知らないけど」
「それは……俺もわからんな」
カブトもクワガタも地上での力強さは注目されても空中での能力がどの程度のものなのかはそれほど興味を持たれないだろうからな。
「やっぱり地上と空中どちらも強い……とまではいかなくても、両方で高いポテンシャルを発揮するって生き物はいなさそうだね」
「ああ。どこまで行っても移動のための飛行能力に過ぎないからな。これを狩りのために進化させるなら、代わりに地上での戦闘能力は犠牲にしなければならない」
そもそも虫の場合、自分以外の種が生存競争のライバルって事になるからな。効率的な生態に洗練させていかないと他の洗練された種に後れを取っていく事になる。
「強いて言うなら……バッタ……? でも、あれだって空を飛ぶためのジャンプ力だよね」
「だな。そもそもの話、大概の生き物にとって強さという概念そのものがあまり重要じゃないって部分もあるしな……虫とかモロに繁殖が目的だし」
勿論、強ければそれだけ生存競争に有利だから重要なのは重要だが、それは繁殖するって目的を達成するための手段というか、条件のようなものだ。強くある事そのものが目的の生物と言うのは……まず存在しないだろうな。
「そりゃあ、強い奴だけが生き残る世界だったらこの世で生き残れる生き物なんて数えるくらいしか残らないだろうね」




