地下に潜む優位性
「まあ、両者の魔法の決定的な違いは魔法を使った後の痕跡がどれだけ残るかってところにあるからね」
「確かにトンネルとして利用出来る程の大きな穴を掘れれば空を自由に飛べる事よりも便利かもな」
「問題は、そのトンネルをどれだけ有効的に使えるかだね。ある程度時間をかければいつかは元を取れるだろうし、そうでなくてもトンネルを他の選手にも利用させればすぐにお釣りが返って来るよね」
トンネルと言うインフラが形を持って残り続けると考えれば穴を掘る魔法の価値は相当高いと言えるだろうな。
「一人だけ空を飛べても意味無い時は本当に意味が無いからな。その点、掘られた穴がそのまま残り続けるのだとすれば、有効活用の手段は一気に増えるだろうな」
「この競技で一番厄介なのが、地中深くまで穴を掘られてその穴の奥底で潜伏される事だろうね。それだけで大半の魔術師は手も足も出せなくなる」
単純に姿を隠せるという点だけで考えても使い道はある。それに加えて地面それ自体が自分の身を守るための防壁……シェルターの役割も果たしてくれるというのだから守るという点においては右に出るものの無い魔法だな。
「俺達が誰からも狙われずに済んでいたのがまさにそれだな。ちょっとした洞穴でさえあれだけ劇的な効果を発揮したんだ。これがトンネルというレベルで長く続いていたら……もっと贅沢を言えば迷路のように入り組んだ構造をしていれば、侵入さえをも備える事だって出来るわけだ。身を守るという点に置いて地面を掘れるというのは使い道が多いだろうな」
「迷路なら敵をおびき寄せて返り討ちにも出来るね。正解のルートが一本しか無いなら敵の侵入経路も特定出来るし」
確かにその点は守る側にとって極めて有利に働く部分だ。基本的に守る側は『いつ』『どこ』が攻め込まれるかわからないという弱点がある。逆に攻める側はこの二つを自由に決められる。……が、地下のトンネルを必ず経由しなければならないという点が加わるのであれば、『どこ』から攻撃が来るかがほぼ一択になるわけだ。勿論、極端な事を言えば別のところから穴を掘って侵入するという手段もあるにはあるが……攻める側からしたらなるべく選びたくない選択肢だろう。




