今度は下から……
「ん? 今度は下からか……」
上空からの攻撃が続き、上を見上げ続けていた俺達に対して相手が打って来た次の一手は地面の下からの攻撃だった。
「うわ! とと……」
魔法陣を展開していた足場が突然割れ、その隙間から伸び出る植物のツルのようなものがミーシャの足元に絡みつこうとしていた。突然崩れる足場と足に絡みつこうとするツルの二重の攻撃に、ミーシャは思わずバランスを崩してしまいその場に転倒しかかるも、持っていた杖で地面をついてなんとか姿勢を保っていた。
「おい、大丈夫か?」
「なんとか。……ここまで攻撃が届くって事は、地面の中にいるね」
「穴を掘って進んでいるのか!? 下手すりゃ空を飛ぶより難しいんじゃないのか?」
それぞれの属性の魔法の難易度がどれほどのものかはわからないが、生物の常識に当てはめて考えるなら穴を掘って進む生物は空を飛ぶ生き物より遥かに少ない。これは地面に潜っているから発見されていないだけ……という点を差し引いても少ないと言える。それは何故かと言えば穴を掘るのに必要なエネルギーが空を飛ぶ事と比較しても桁違いに多いからだ。仮に地面を1メートル掘り進めるとして、自分の体重の何倍の土を掘り起こして別の場所に移す必要があるのか想像もつかない。
「適性があるから一概には何とも言えないけど、長期的な運用じゃないと割りに合わないハズだね」
「長期的な運用?」
「穴を掘ってその場に留まるって事。空を飛んでその場に留まる事と比較したら難易度は一気に逆転するからね」
なるほど、それはミーシャの言う通りだ。穴を掘ってその場でじっとしているだけなのと、空を飛び続けてその場でホバリングする事とでは大違いだ。
「一度穴を掘ってしまえばそれで終わりなのと、常に空を飛び続ける事では、トータルの難しさはある程度釣り合うって事か」
コストをいつ支払うかの違いか。機械で例えるならいつ燃料を消費するかの違いだな。穴を掘ってその通路を利用するのはいわゆる先行投資……コストの先払いだ。逆に空を飛び続ける限り常に燃料を消費するのは……着払いと言ったところか?




