両方対応出来なければならない
「本命の攻撃は微妙に角度やスピードが違う? 良くわかるねそんなの」
ミーシャは訝しむような表情で俺に尋ねて来る。まあ、矢が飛んで来る時間なんてほんの一瞬だ。その一瞬で矢の角度と速度を見極めて他と比較して違いを見つけるなんて芸当は常人にはまず不可能だろうな。
「まあ、何となくだ。それに、索敵魔法が得意な魔術師ならもっと簡単に測れるだろ?」
「そこに込められている魔力だとか何だとか。そういったものを識別するのは得意だろうからね。だけど、どれが強力な魔法が付与された矢なのか、もしそれが一目でわかったとしても、普通の矢の方も捌けないと意味がないんだよね」
これはミーシャの言う通りだ。警戒すべき比重は変わっても、ちゃんと対応出来なきゃ意味が無い。例えどんなに強力な右ストレートへの対策を実行出来てたとしても、左ジャブに対応出来ないのであればそのままジャブを撃たれ続けるだけだろうし、それで態勢が崩れれば、本来対策済みされていたハズの右ストレートだって命中させる事が出来るだろう。
「両方に対応出来なきゃ意味無いわけか。いかに強力な攻撃を見切り、回避する事が出来ても、通常攻撃に対してどうする事も出来ないのであればそのままゴリ押しされるだけだな」
「その対応策も、もう少しで呼び出せるよ」
どうやら召喚術ももう少しで完了するらしい。それを周囲の選手達も察しているのか、ここが正念場とばかりに一斉攻撃を仕掛けて来る。攻撃の規模から考えて、さっきまでの選手だけじゃ無いな……他の選手達もこのタイミングで攻撃に参加してきたようだ。
「ようやくこっちも自由に動き回れるってわけだ」
「この攻撃を堪え切れたらだけどね……!」
ミーシャは自身に向かって来る攻撃に対して身構える態勢を取る。流石にこれだけの数の攻撃だ。俺の魔法だけではとてもじゃないが捌き切れん。しかし、ミーシャは今召喚魔法の真っ最中だ。そんな状態で他の魔法が放てるとは思えない。と、言う事は……だ。俺自身が攻撃の間に割って入って攻撃を受けるしかないというわけだな。




