この瞬間が狙われていた
「召喚が終わるまでの間は俺が攻撃を防ぎ続けるしか無いな」
「自由に動き回れるならばともかく、身動きの取れないこの状況で防御が続くか?」
「魔法の撃ち合いじゃ手数の差で負ける。……と、なれば物理的に守る必要があるな。……盾は持ってるか?」
「一般流通しているもので良ければな。このレベルの魔術師を相手にどこまで持つかわからんから幾つか置いておくぞ。ついでに剣もな」
そう言いながらオリヴィエは大小様々な大きさの盾や剣を置いた。
「助かる」
「言い忘れていたが別に壊してしまってもかまわんぞ。この競技が終わるまでに残っていれば御の字だろう」
確かに攻撃の苛烈さ次第では大破する可能性は高いな。
「むしろこれで足りるのを祈るしか無いな」
魔法での迎撃も含むのにこれで足りないとかは想像したくないな。一発で盾がオシャカになるようなペースで攻撃を受け続ける事になるって事だ。……万に一つでも撃ち漏らしてミーシャに直撃でもしたら大惨事だな。
「足りぬのなら貴様が盾にでもなるのだな。私はあの火球の迎撃に向かう。私がこの場を離れれば敵も好機と見る。覚悟しておけよ?」
そう言いながらオリヴィエはカタパルトに乗り込む。オリヴィエがいなくなればその分だけ確実に攻撃の手数は減るわけだから、総攻撃で押し切れる確率は上がる理屈だ。当然、オリヴィエが超上空へ射出された瞬間から一斉に仕掛けて来るだろう。……そして、案の定周囲に潜んでいた選手達からの総攻撃が始まった。それ自体は予想通りだ。こちらの想定を上回ってきたのは、オリヴィエがカタパルトで射出される瞬間だ。まるでその瞬間を待っていたかのようにオリヴィエに向かって攻撃が飛んでいく。まさにこの瞬間を狙われていたのだろう。だとするとカタパルトの存在にも利用法も知られていた事になるが……俺達が出来る範囲でのカモフラージュなど、選手達からしてみたら児戯に等しいのだろうな。
「ったく、この瞬間が狙われていたとはな。だが……これであの連中の計画も多少は狂ったか……?」
早速、オリヴィエから渡された盾の有効活用が出来た。左手で盾を持ちながら攻撃の幾つかを防ぎつつ、右手から魔法を放って攻撃を迎撃する。カタパルトから発射された瞬間の射角はこれでカバー出来たが、さらに上空へ飛んでいくオリヴィエへの攻撃は流石にカバーしきれない。俺までこの場を離れたら攻撃の的がミーシャになるだけだからだ。




