相手からの分断策
「分断策か……それをわかった上で、一人であれを迎撃しに行くって言ってるのか?」
「このまま睨み合っていても仕方あるまい。それに召喚を中止して逃げに回れば同じ事の繰り返しになる」
確かに大型モンスターの召喚に対して遠距離魔法での妨害が間に合うのでは、完封され続けてしまう。
「強引にでも動くべき時間というわけか……」
「……と、言うより、多少隙を見せねば向こうから仕掛けて来る事は無いからな。読み合いというのは互角か一枚上手だから成立するのだ。五枚も六枚も上手じゃ勝負にならん」
なるほどな……勝ち目が無いんじゃ逃げる以外の選択肢が取れないからこっちから多少の隙を見せる必要があるというわけか。
「分断しない事には策も何も無いわけか」
「安全圏から遠距離攻撃を仕掛けるくらいしか出来る事がないわけだな。それすらもそこまで効果が無いのであれば、もはや何もしない方がマシまである」
勝つ事を最優先とするなら、勝ちに繋がらない行動を取る価値は皆無という事になるからな……多少なりとも相手に勝ち目があると思わせない事には、話は先に進まないわけか。
「手に入らない百点より、手に入る数点の方が価値があるわけか」
「そういう事だな。……と、それより、何か仕掛けて来てるぞ」
オリヴィエの指摘通り、茂みの中から攻撃が飛んできた。また別の奴が遠距離攻撃を仕掛けて来たのか。
「ミーシャ狙いか……」
俺はすかさず火属性魔法で迎撃する。第一波は相殺出来たが、撃ち合いになれば連射の差で俺の方が押し切られるな。幸い、攻撃は一直線に向かってきている。つまり攻撃が来た方向に向かって突撃すれば、容易に相手を制圧出来るわけだ。もっとも、相手がまずやりたいのは分断策。将を射んとする者はまず馬を射よ……という奴だ。安易に俺が動くのは……しかし、あえて相手の策に乗らねば戦いそのものが起きないなんて本末転倒な事になりかねない。思った以上に頭を使う事になりそうだな。




