基本的に利己的な連中
「なるほどな……そういう事もわかるのか。と、いう事は、向こうも同じ事がわかっているって事か」
「ああ。私の方は身を隠していないからそこまで痛手では無いが、向こうからしてみたら迂闊に行動すれば即座にバレるという恐怖心が働いて動けなかったようだな」
「まあ、完全に不意打ちが出来るならともかく、お互いに魔法の撃ち合いはしたくないか」
今この辺りにどれだけの人間が潜んでいるのかわからない状況だからな……最初にオリヴィエを狙うのはかなりリスクのある行動だ。単純に返り討ちに遭う可能性もあるし、他の選手から漁夫の利を狙われる危険性もある。
「ああ。空間魔法の撃ち合いは基本的に陣取り合戦だからな。撃ち合いになれば間違いなく私の方が勝つ」
「お互いに空間に干渉し合うから、より広い範囲に干渉出来る方が有利というわけか……」
「仮に互いの魔法を相殺し合えると仮定した場合、相手のリーチをこちらのリーチで完全に覆い隠してしまえば完封する事が出来るからな。空間魔法の発動速度も発動回数も私の方が上回っているなら、向こうに勝てる道理は無い」
「そこら辺は魔力の量が関わって来るな。最初の一人目ならお前が圧倒出来るが……二人三人と増えていくと、流石のお前でも手に余り始めるだろう?」
ファーストペンギンとか言ったか? 一番最初に仕掛ける奴が一番割を食う事になる。最初にリスクを負うから、最初にリターンを得られるわけだが、最初の一人はほぼ間違いなく失敗してリターンを得られるのは二人目以降になる事が濃厚となれば、誰もファーストペンギンにはなりたがらないだろうな。
「ああ。利己的に考えるなら、万全の状態の私と戦うのは自分以外の誰かでなければならない理屈になる。そこでチームを組んで先鋒を決める理屈が生まれるわけだが……今この場には私以外に貴様とミーシャの二人も一緒にいるからな。小規模なチームでは消耗戦にしかならん。つまり、何としてでも分断策を用いたいわけだ」
分断策……それを理解した上で上空から来る火球を単独で迎撃しようとしているのか。……まあ、このままだといたずらに時間をかける事になるから、あえて相手の策に乗ると言ったところか。




