索敵魔法の干渉
「あの火球を迎撃した後か……何とかなるハズだ。あれだけの高さなら並みの魔術師は攻撃手段を持たないだろうからな。だが、絶対とは言えんな」
「物理的に届かないものはどうしようもないとしてだ。着地を狙われる可能性が高いぞ」
「可能な限り貴様らのいる場所に着地するさ。それはそれで軌道を読まれる危険性が高まるわけだが……そんな事が出来るなら地上にいても同じことだ」
オリヴィエの言っている事はおおむね正しい。空中にいる状態は勿論の事、着地した際の隙やその直前の着陸態勢をピンポイントで狙えるならそもそも地上のどこにいたところで狙撃されて終わりだ。それを警戒すると言うなら地下シェルターにでも籠って身を守るくらいしか方法は無いだろう。
「上の存在を考えたらきりが無いか。そして、そこまで上位の存在を考慮しないのであれば、空の方がかえって安全か……」
そう言いながら俺は遠くの茂みを見つめる。
「なんだ? あそこに誰か隠れてるのか?」
「ああ。数人、こっちを覗いているな」
「そうか。あっちの方角にいるのはわかっていたが、あそこだったか……」
「ん? わかるのか? 七十メートル近く離れてるが……」
「正確な方角も距離もわからん。潜んでる人数もな。だが、だいたいあの方角に誰かが隠れている事は前からわかっていた。私の索敵魔法と範囲が干渉し合っていたからな」
なるほどな。確かオリヴィエの魔法は半径五十メートルにドーム状のレーダーのようなものを展開しているんだったな。という事は、そのレーダー同士で干渉があれば、その近くに自分以外に魔法を展開している誰かがいるという証拠になる。丁度コンパスで二点の二等分線を引くようなものか。もっとも、お互いに綺麗な円を描かない限りは正確な位置なんて特定しようが無いから、だいたいあっちの方という事しかわからないのだろうがな。




