こっちは狙わない……?
「早急にどちらかを倒さん事には、最悪丘の向こう側の連中からの挟み撃ちにあうな。流石に連絡を取り合っているとは思えないが……この状況を見れば、私達を狙った方が得だとすぐに判断するだろうな」
オリヴィエは今自分達が置かれている状況を冷静に分析する。
「選手よりも審査官の方が得点は高いからな。……まあ、参加選手全員が顔と名前と所属を一致させて把握しているかはわからんが……」
案外、俺達の顔を見ても普通の選手と誤認する可能性は普通にありえるだろうな。
「確かに有名選手ならともかく、私達と無名の選手とを正確に識別出来るかと考えると……怪しいな。だが、仮に私達の事を選手だと認識していたとしても、優先して狙われるのは私達だぞ?」
確かにそれはオリヴィエの言う通りだ。何せ俺達は今、他の選手から遠距離攻撃を受けている最中だ。目の前の得点を考えるなら、間違いなく俺達を狙うべきだろう。
「理論上、あの遠距離攻撃を仕掛けて来ているあの魔術師を競技通過のための障害と捉えるなら、俺達と協力して戦うという選択肢も出て来る可能性もあるぞ?」
「……完全に机上の空論ではあるが、確かに理論上はあり得るな」
「まあ、俺達と協力するってのは荒唐無稽にしても、俺達を完全に無視してあっちを狙いに行くって作戦はあり得るだろ? ぶっちゃけ、お前を倒せない限りは生き残った方が計算上明らかに得点が高いハズだからな」
オリヴィエを倒した際に貰える得点は百点だから、リスクを承知で挑戦する価値はあるだろうが……他の審査官はそうもいかない。生存点が数十点単位で貰える事を考えると、『敵を倒しつついかに生き残るか』が突破のキモになるハズだ。ならば、激戦区にわざわざ顔を出すのは愚策と言えるだろう。それに俺は倒しても零点だしな。




