状況が変わって来た
「あの中に選手がいるかもしれないってのが厄介だな……障壁に対して何か細工を施すって事は出来ないだろ?」
「絶対に無いとは断言出来んが、流石にそれは考えにくいな。障壁発生装置は別のどこかに隠していると考えるのが妥当だろう」
流石にそれはそうか。障壁に常にダメージが入る事になるからな。
「そうなると、仮にあの火球の中に選手が潜んでいたとしても、そいつを倒すメリットは無いわけか」
「そうは言うが、それで相手選手を無視していたらこっちの障壁が破壊されかねないのだから倒すしかないぞ」
確かに。障壁を破壊されたらそれで敗退する事になるのだから、最優先で守るしかない。
「結局は倒す必要があるのか。……ん? 何の音だ……?」
不意に、鈍く低い音がかすかに、しかし確かに鳴り響いた。そしてそのわずかな音の次の瞬間には衝撃音が音を立て、壁を伝い、足元や背中から振動を感じた。
「砲撃か……!? 丘の向こう側から撃って来ているのか……!」
オリヴィエは驚いた様子で後ろを振り向く。
「俺達を狙ってのものか? それとも壁の向こう側に別の誰かがいるのか……」
「向こう側から攻撃しても無意味……と、言いたいところだが、貴様ら二人の持っている障壁発生装置の防御範囲はかなり広い。砲弾の貫通力次第ではダメージが発生するかもしれんぞ」
「……敵は障壁の性質を理解した上で砲撃を仕掛けて来ている可能性があるって事か」
「まあ、普通に考えれば向こう側で戦闘が発生していると考えるのが妥当だがな。さっきのがこちらを狙っての砲撃なら、少なくとも障壁の範囲は完全に把握されている事になる。それにしては狙いが雑だし、連射もしてこないからな」
狙いが雑……というのは、貫通力が高かったとしても、射線が障壁に当たらないような砲撃だったという事か。確かに地中に埋まっているハズの障壁の特定は出来るのにそこへの狙撃が稚拙と言うのはちぐはぐな印象を受ける。
「敵が近寄って来るのを待っていたわけだが……こっちが痺れを切らして穴の中から出て来てからやって来るとは、ままならないものだな」
もう少し洞穴の中で待っていれば……いや、俺達が出て来たから遠距離攻撃が飛んで来て、それをきっかけにした戦闘なら、考えるだけ無駄な事なのか? 何にせよ、これで状況が少しは変わりそうだな。




