遠く及ばない
「まあ、百メートルも離れた的に当てられる魔法とかもはやそういう性能の魔法にしかならんからな」
「百メートルは百メートルでも、その意味は全く違うぞ。百メートル先にまで届く魔法ではなく、百メートル先から発射される魔法だからな」
「撃った本人は確認出来るのか? それ……」
的の大きさにもよると思うが、肉眼で把握するのはそれはそれで特殊能力染みたものに思えるが。
「それは仲間と連携して確認するなり、それ専用の魔法を別途で習得するとか方法はあるな」
「長距離攻撃を仕掛けるにはどのみち何かしらの工夫は必要という事か」
「攻撃の射程距離が長いというのはそれだけで武器になるわけだな。そして、攻撃そのものを届かせる事それ自体は案外難しくは無い。問題なのは、それを正確に把握する事だ」
それこそ大砲を使えば山の向こう側に潜んでいる敵だって攻撃出来るわけだからな……もっとも、敵がどこに潜んでいるのかわからない上に、仮に分かったとしてもピンポイントで狙撃出来ないのであれば、だいたいで発射してまぐれ当たりを狙うしかないわけだが。
「遠くを見渡せる特殊な視野とそこへ的確に攻撃を打ち込める技術……その両方を併せ持たない限りは遠距離攻撃は成立しえないわけか」
「ああ。今まさにこっちに向かって飛んできている魔法だって、射程距離こそ大したものだが……この競技を勝ち抜ける程の実力者かと問われると厳しい結果が待ってる事だろうな」
「遠距離攻撃としてはそこまでのレベルじゃないって事か?」
「何よりまず命中までが長すぎるからな。発射を見てから対応が間に合うようじゃ効果が薄い。一方的に攻撃すると言う強みを押し付ける事が出来ないのであれば、実力でこの競技を突破するのは難しいだろうな」
攻撃が命中するまでの間に近寄る事が出来る時点で世界的にトップクラスの魔術師には遠く及ばないって事か。




