射程距離の違い
「あくまでも一般人の領域を良くも悪くも逸脱しない範囲でなら実力とは無関係なわけか」
「ああ。選べる選択肢が違い過ぎるからな。魔法を放つ度に自分にもダメージを受けていたら効率が悪いどころの話では無い。そのため、自分にもダメージが入る事を前提にした魔法の習得か……いっその事、他人に魔法を当てる事そのものを諦めて自己強化のみに振り切ってしまった方が効率は良いだろうな」
自分の放った魔法に自分が巻き込まれるのはやむを得ない事と割り切るのか。まあ、血のにじむような努力をして一般人レベルまで上げるより、限られた選択肢の中でだけでも人並外れた能力を獲得する方が良いと言う事なのだろう。
「自己強化なら射程距離なんてゼロで良いわけだからな。遠距離攻撃なんて自己強化で自傷ダメージを帳消しに出来るようになってから身に着ければ良いってわけか」
「魔法を放つ度にケガをしていては訓練どころでは無いからな……継続する事が出来ないのであれば、その努力はすべきではないだろうな」
まあ、ケガで練習が出来ないんじゃあ、ケガも無く毎日練習出来る奴に勝てる見込みは無いと言わざるを得ないからな。そいつが圧倒的な天才でもない限りは。
「選択肢が無いなら無いなりに出来る事がまだ残ってるだけまだマシって話だな。ある程度のバランスは取れるんだろ?」
「まあな。適性が特殊過ぎて専属の教育を受ける必要はあるだろうがな。そういう意味では、射程距離が極端に長過ぎる魔術師と同様の悩みを持つ事になるな」
「長過ぎてもそれはそれでそいつに魔法を教えられる教師がいなくなってしまうわけか」
「その通りだ。何の変哲もないごく普通の魔法であっても、それが何十メートルも何百メートルも離れた場所から発射出来るのだとしたら、その者の魔法の運用方法は根本的に違うものになってしまうだろうからな」
確かに攻撃の届く範囲は広いに越したことはない。同じ魔法であっても、片方だけが一方的に攻撃を仕掛ける事が出来るのであれば、結果は一方的なものになるだろうからな。




