自傷しない工夫
「まあ、一瞬で最大火力まで高めて発射するのが普通だろうな」
「一応、難易度は跳ね上がるが特定のもの……まあ、基本的には自分自身なのだが……とにかく、特定のものにはダメージの発生しない魔法と言うものも存在する。それを用いれば炎が自分自身を燃やしてしまうという事象も避けられる」
「そういえば、お前もそんな魔法を使った事があったな」
自分にはダメージの発生しない爆発魔法で自爆する事で攻撃するって方法があったハズだ。もっとも、服をダメにするのと一発で使い切りの攻撃という、最終手段の攻撃法だから滅多に使おうとはしなかったが。
「まあな。……私の場合だとかなりの下準備が必要になるがな」
「使う度に服を一着ダメにすると考えるとコスパは最悪の部類になるだろうな」
「いや、服を破損する事そのものはまだ良い。問題なのはその服を作る事の難易度だ。私の技量では錬金術での錬成でしか染料を精製出来ないからな……だから厳密には私はそんな魔法は習得していない」
「じゃあ、お前の発動する魔法は絶対に自分にもダメージが発生するのか……?」
わざわざ使う理由が無いから使ってこなかったのだとばかり思っていたが……自力ではそもそも発動出来なかったのか。
「その通りだ。そもそも大概の魔術師がそうだ。一部、自傷しない魔法を扱える者も存在するが、そういう手合いは何かしら明確な理由を持ってその魔法を習得している。例えば炎を身にまとう事で武器と防具の両方として活用する場合だ。それでさえも、自傷しないのではなくて自分自身を防御魔法で覆ってダメージを無くしていたり、回復魔法で受けた自傷ダメージを帳消しにしているだけだったりするのが殆どだがな」
殆どがやせ我慢のごり押しで何とかしているだけってわけか。まあ、オリヴィエの場合であっても、自傷ダメージを受ける前に転送魔法で別の場所に送り飛ばしているだけなんだから、やってる事の本質的には同じ部類になるのだろうな。……俺がやるとしたらやはり、自傷しない魔法を習得するのではなく、自分自身の耐久力に物を言わせて実質ノーダメージで押し通して自分もろとも魔法で焼き尽くす事になるのだろうな。




