唯一危険な属性
「確かに……意識した事は無かったが、自分の体からは離れた場所に魔法を出しているな……」
「ああ。あれが出来るかどうかでも多少の有利不利は出る。逆に言えば、出来ない者は出来ない戦い方でもある」
別に難しいとは思った事も無かったが、人によってはその時点で躓く事もあるわけか。
「離れて魔法を出す事が出来ない魔術師が同じことをやろうとすると、どうなるんだ……?」
「属性にもよるが、火だったら自分の手のひらを火傷する事になるだろうな。土属性なら自分の体に密着する形で土くれが出現する事になるし、風属性なら自分の手のひらを切る事になるかもしれん」
「水属性なら……手のひらが濡れるだけか? それなら何とかなりそうだな」
「そんな単純な話ではないぞと言いたいところだが……まあ、自分で触れざるを得ないのに、わざわざ触れる事の出来ない魔法を使うバカもいないか。一番割を食うのは火属性だろうな」
確かに火水風土の四つの中で直接手で触れたら危険なものと言ったら火になるだろうな。
「確かに他は触れるだけなら特に問題の無さそうな物ばかりだな」
「一応、触れたら不味い魔法は他の属性にもあるのはあるんだが……それは他ならぬ発動者本人がわかってる事だからな。だからこそ火属性魔法の扱いにくさが浮き彫りになるのだが……」
自分自身を傷つける心配の無い魔法と言っても、火属性には無いだろうな。
「実際、その場合火属性魔法はどうやって出す?」
「一瞬で必要な出力まで引き上げてそのまま発射するという方法が考えられるな。極めて難易度は高いが、そもそも頭上に火の玉を出して魔力を注いで火力を上げるなんて真似、たいていの魔術師はしない」
まあ、滅多にやらないだろうな。一瞬の間に強力な魔法を発射出来るのはオリヴィエが実演済みだしな。そういう意味ではバランスは取れているのか。




