専門家レベルを目指していないなら
「八割と言うが、お前みたいに転送魔法と併用する事で弱点は補えるだろう? むしろその運用を前提に考えるなら長い射程距離は必要ない事になる。……もっとも、お前と同じ戦闘方法を取る奴が一人もいないって事は参考にすべき方法じゃないって事なのだろうがな」
爆発魔法にせよ、転送魔法にせよ、それら自体は数多く存在する魔法の一つに過ぎない。つまり単独での運用を考えればオリヴィエ以外にもそれなりの数はいるハズなのだ。しかし、オリヴィエと同じ運用方法を用いる者は皆無と言って良い。つまりはそれだけ一般的なセオリーからは逸脱した戦い方なのだろう。
「まあ、参考にはならんだろうな。そもそも破壊力を追求せねばならない魔法なのに、魔力の幾らかを転送魔法の方にも配分せねばならないという点で効率が悪いと言わざるをえないからな」
「他の魔法と併用する事がそもそも間違いというわけか? ならなんでお前はそんな事をするんだ?」
当然、そういう疑問は出て来る。自分で効率が悪いとわかってる方法をわざわざ取る意味がわからん。
「……五十メートルも離れた場所に爆発魔法など発動出来るものか。まだ三メートルの大台を超えたばかりだというのに」
「じゃあ、今の目標は三十メートルの突破か」
「いつになるかわからんなそれは。理論上その距離までのコツが掴みやすいというだけの話でしかない。それに、代用出来ている以上、わざわざその方向性で技術を磨くより、もっと別の分野での技量を磨いた方が効率が良いだろう?」
……まあ、別の方法で同じような事が出来るよりも、別の方法で別の事が出来るようになった方が単純に手札は増える事になるだろうな。
「専門家から言わせたら、何かと言い返されそうな意見ではありそうだが……専門家レベルを目指していないなら、もっと幅広く魔法を習得した方が良さそうではあるな」
野球で例えるなら、変化球は一つだけあれば十分と言ってるようなものだな。プロのレベルでは通用しないのかもしれないが、プロになるつもりが無いのであれば、別の変化球を覚えるよりもバスケやサッカーも出来るようになった方が楽しいという事なのだろう。




