凄いのは凄いが……
「三センチか……確かに意識した事は無いな……」
「実際、わざわざ定規で測って調べる事でもないしな。だが、このたった三センチを超えているかどうかで今後の伸びが劇的に変わるわけだ」
「たったの……と、言いたいところだが、わかりやすい目安としては最適かもな」
それである種の才能を見極める事が出来るのであれば、調べておくに越した事はないな。
「ああ。区切りを知っていれば、どこかの段階で訓練を止める事が出来るからな」
確かに……壁を超える事が出来るかどうかは本人が一番よくわかっているだろうからな。知識として持ち合わせているのであれば、自分にその壁は超えられないと判断する材料になりえるだろうな。
「訓練の目安になると考えられるなら、人にものを教える立場である教員なんかは調べておきそうなものだな。入学試験の時に実は調べられていたのか……? 俺は気が付かなかったが……」
「一応、それとなく調べてはいたとは思うぞ? もっとも、それが合否を決める要因にはならないと思うがな」
「そうなのか?」
結構意外な答えが返って来たな。才能という部分を可視化する方法としては重宝しそうなものだと思ったが。
「ああ。これが桁外れの距離なら得点にもなるだろうが、範囲が広ければ強いというわけでもなければ、狭いからと言って弱いという事でも無いからな。実際のところ、魔術師の二人に一人は遠隔操作の範囲が三センチに満たない。三十センチ未満は全体の八割を超えるとも言われている。……なら、遠隔操作の範囲が三十センチを超えている者が優れているかと言われたらその通りではあるが、上位二割に入れるかと言われたら微妙なところだろうな」
凄いのは凄いが、圧倒的というわけでもないわけか。ちょっとした特異体質みたいなものか。




