距離の目安
「……まあ、私は今十メートルを例えとして出したが、実際は三メートルもあれば上澄みと言えるのだがな」
「そうなのか?」
オリヴィエの言葉に一瞬驚いたが、確かに三メートル離れた場所にある自分の魔法に対して遠隔操作が可能と言うのはかなり特異な才能と言えるかもしれないな。少なくとも接近戦なら三メートルという距離は決して短くない。仮に人形を操る魔法があったとして、その操作範囲が三メートルなら十分な距離と言えるだろう。
「ああ。正確には三メートルあれば上澄みなのではなく、三メートルを超えるか超えないかが目安と言われている」
「三メートルって距離に大きな壁があるわけか」
「壁そのものは段階的に他にもある。三センチ、三十センチ、三百センチ……つまり三メートルだな。そんな感覚で大きな壁があるようなイメージだ。面白いもので、三メートルの目安を超える事は極めて難しいとされているにも関わらず、一度その大台を超えると、次の目安の三十メートルまでは訓練次第で比較的すんなりと距離を伸ばせると言う点だ。コツを掴むと早く成長出来るようだな」
三センチや三十センチは理解出来るが……三十センチからの三メートル突破は難しいが、三メートルまでなら訓練で距離を伸ばせるというのは釈然としないな。
「距離が遠い方がより高難易度で、出来る奴も少ないというのはわかるが……言うほど三メートルが大台になるか? もっと細かく刻むものに思えるが」
「言いたいことはわかるが、本当に壁があるとしか言いようのない隔たりがあるのだ。恐らく一番想像しやすいのは三センチを突破するかしないかだな。これに関しては無意識レベルで突破するかしないかが綺麗に分かれるようだ」
確かに三センチくらいなら簡単に出来てしまいそうな雰囲気はあるな。出来る者も多いが、出来ない者も大勢いるわけか。




