手元から離れた後のコントロール
「一般論としてはそれで正しいが、厳密には手元から離れた魔法をコントロールする事は誰もが無意識に行っている。例えば手の平の上に火を灯すのだって、直接肌が触れているわけではないのだからこれも立派な遠隔操作に当たるわけだ」
そう言いながらオリヴィエは指先からろうそくくらいの大きさの火を出す。確かに指先に直接火がついているわけではない。これを手のひらからだけではなく、自身の頭上にも出現させる事が出来るのだから、確かに遠隔で魔法を制御している事になるのだろう。
「長いか短いかの違いだけって事か。やっぱり長距離魔法が得意な奴は遠隔操作も上手いのか?」
「絶対では無いがその傾向はあるな。ただ、長距離魔法と言っても大砲の弾を発射するような魔法なら適正はほぼ関係無いな。遠隔操作というのは、例えるなら発射された後の弾丸に対してどこまで自由にコントロール出来るかという考え方に近い。十メートル以内の弾丸の軌道を制御出来るのであれば、確かに驚異的な技術といえるが……その能力の真価が発揮されるのは遠距離ではなく接近戦だろう?」
確かにオリヴィエの言葉も一理あるな。
「自分と十メートル離れた場所から大砲を出現させて発射しているようなものだからな。発射地点を誤魔化す目的で使えばかなり有用だが……遠距離になればなるほど、十メートル離れた場所を発射地点に出来るというメリットは薄くなってくるだろうな」
これが接近戦なら、全然違う場所から攻撃が来るわけだから、敵の数を誤認する要因になるかもしれない。多少離れた状況での戦闘として考えても、砲台が離れた場所に幾つもあるわけだから敵としては厄介この上ない。とは言え……これが遠距離攻撃においてメリットになるかと言われると、なんとも言えないものになるだろう。これが地上で城壁を破壊するための大砲の発射地点を欺くためなら効果的かもしれないが、これが船に搭載している大砲の位置を十メートル誤魔化すとかだったらそこまで効果的とは言えなくなってくるだろう。何せ十メートル程度では結局同じ船から発射されたものとして、敵を欺く事が難しくなるからな。




