手元から離れた魔法
「強い武具があれば強い魔術師に対応出来るという側面は勿論あるが……その上澄みが最新の武具を揃えているという状況が往々にしてあるからな。そもそも自分で作る者だっているんだ。自分が必要とするものを自分で作るという意味では、需要と供給は完全に噛み合っているだろうな」
「戦うだけでなく、武具を作る才能にも優れているのであれば、時間さえ与えたらとんでもない急成長を遂げるだろうな」
物を作るにはそれなりに時間がかかるだろうからな。だが、十分な時間をかけて道具を作れるのであれば、その道具で別の道具を作って……その道具で……というのを繰り返して行く事で途方も無い進化を遂げるかもしれないからな。
「最終的に何を作るのかにもよるが、自分で道具を作れる奴が野放しになっているのだとしたら、今頃手も足も出ないだろうな」
「……ねえ、さっきから攻撃が来るの遅くない?」
不意に、魔法陣を描き上げている最中のミーシャがつぶやいた。
「遅い? ……確かにこれだけ会話しててまだ降って来ないのは遅いな。……減速しているのか……?」
「発射された魔法が減速する要因は限られている。他の魔法の干渉を受けているか、自発的に減速させているかだ。あれだけ上空に打ち上げた魔法が今なお制御下に入っているとしたら感嘆に値するがな」
「普通、手元から離れた魔法はそのまま一直線に飛んでいくしな」
基本的に、俺は魔法を発動した後はそのまままっすぐにしか飛んでいかない事になる。……が、技量のある魔術師なら、ある程度離れた後の魔法にも干渉する事が出来るとされている。




