成功させるしかない
「炎に炎をぶつけるのはあまりスマートなやり方ではないのだが……」
オリヴィエが独り言を呟くと、自身の頭上に巨大な火の玉を出現させる。
「それを転送でぶつけるのか? だが、五十メートルの転送だと……」
「それでは近過ぎるな。幸い、向こうから降って来る攻撃は直線の動きだから当てる事は不可能では無い」
「何百メートル……いや、何千か? ……そんなにも離れたところからやってくる飛来物に対して攻撃を当てるのか。そんな遠距離攻撃なんてやった事あるのか?」
こっちに向かって飛んで来るボールに対して、こっちからもボールを投げてボール同士をぶつけて撃ち落すようなもののハズだぞ?
「無いな。今この瞬間で成功させるしかない」
「五発以上か?」
「何も失敗が許されないってわけでもない。下手な鉄砲とも言う……やれるだけの事はやって、当たりそうになければ至近距離での迎撃に切り替える」
上手く撃ち落してくれればそれで良いが、魔法陣が崩れるのであれば俺がミーシャを担いでどこかへ逃げて召喚魔法のやり直しをするしか無さそうだな。
「無理だと思ったらすぐに言えよ? ミーシャを脱落させるくらいなら仕切り直した方がまだチャンスは残るからな」
「仕切り直しか……ミーシャ、いっそのことその召喚は一度中断して火の玉を防御出来る奴……水属性の魔法でも使えるモンスターを召喚するとかは出来ないのか?」
一時中断って……そんな便利な事が出来るのか?
「残念だったね。これから召喚するモンスターがその遠距離攻撃を耐え切れるモンスターなんだよね」
「どうあってもここで防ぐしか無いってわけか」
オリヴィエは火の玉を発射させる。上空へ飛び上がって行くそれはしばらくすると花火のように爆発した。
「当たったのか?」
「ここからじゃ距離感が掴めんからわからん。爆発に巻き込めれば良いが……」
俺やオリヴィエの期待も空しく、火の玉はなおもこちらへ向かって落下を続けていた。お互いが正面衝突するような軌道を描いているなら、爆発に巻き込める時間的猶予はほんの一瞬だ。恐らく爆発のタイミングがずれていたのだろうな。




