迎撃は間に合うか
「どうだ? 召喚は間に合いそうか?」
今もなおゆっくりと魔法陣を描き上げているミーシャに対し、こちらに向かって真っすぐに落ちて来ている火球を眺めながらオリヴィエが呑気に質問する。
「無理だね。五、六発は貰うかも」
「五発だと……? 地面が吹き飛ぶんじゃないのか?」
「地面が吹き飛んでも魔法陣には影響は無いからそこは気にしなくて良いよ。ただ、魔力の干渉で魔法陣が乱れるかもしれない」
「それは、私の魔法でも影響を及ぼすって意味じゃないのか……? いっそ本当に運んでもらった方が良いのではないか?」
物理的な破壊力で魔法陣が破壊される事は無くても、魔力による干渉で魔法陣が歪むとなると、話が違って来る。オリヴィエの方も下手に魔法を発動出来ないという事になるからだ。
「魔法陣を描き上げるだけでもかなり魔力を持ってかれるのに、何度もやり直しなんてやってられないよ」
「だったらその魔法陣、何があっても必ず描き上げろよ? あの規模の魔法を相殺するとなると、私も本気を出さざるを得ない。魔力の奔流が発生するから、覚悟しておけよ」
ミーシャは魔法陣を描き上げている最中。敵からの遠距離攻撃に、それに対して迎撃のための魔法……三者三葉の巨大な魔力がぶつかり合えば、予測不可能の魔力の流れが発生するのは目に見えている。問題なのは、その魔力の流れでミーシャの魔法に何らかの悪影響が出ないかどうかだ。
「ちょっとやそっとの魔力の乱れくらいじゃ、召喚魔法は失敗しないよ。とにかく、あんなのまともに食らったらひとたまりも無いから、上手く迎撃しといてよね」
術者が物理的に吹っ飛ばされたら魔法陣を描き上げるも何もあったもんじゃないからな。まずはこの危機をしのぎ切る事を考えなければな。




