大技の撃ち合い
「ほう、ようやく大物を召喚するらしいな……」
雰囲気の違うミーシャの様子を見て、オリヴィエがつぶやく。
「ここじゃ、少し狭いかな」
そう言いながらミーシャは洞穴から出ていく。恐らくこの洞穴には収まりきらない程大きいモンスターを召喚するようだ。
「おいおい、大丈夫か?」
洞穴から出れば敵に発見されるリスクも高まるし、何より物理的に壁も無くなるから攻撃を受ける危険性もある。俺は思わずミーシャを呼び止めた。
「近くには誰もいないから大丈夫だよ」
ミーシャは杖を天にかざすと、前方の地面にゆっくりと魔法陣が描き出し始めた。
「いや大丈夫では無いだろう、この召喚は。流石に気付かれるぞ」
オリヴィエのこの心配は次の瞬間には的中した。ミーシャの発動した魔法に気付いたのか、巨大な火の玉が上空に打ち上がり、こちらに向かって降り注いでくる。
「召喚される前に潰すって魂胆か……? どんだけヤバいもん召喚するつもりだよ……! 俺達で止めるしかないな」
ミーシャは魔法の発動があるからどうする事も出来ないだろう。火の玉の方は俺とオリヴィエで対処するしか無いな。
「あの程度なら相殺は出来るが……引き付けないとこちらの攻撃が届かんな。衝撃で吹き飛ばされるなよ」
あの火の玉を爆発でかき消すわけか。しかしオリヴィエの爆発魔法の射程距離は五十メートル……一発や二発ならともかく、あれだけの数の火球を爆発で防ぐとなると、むしろオリヴィエの魔法でミーシャが吹き飛ばされかねないな。
「俺がミーシャを担いで逃げるってのはどうだ?」
「魔法陣が乱れるから動かさないで」
「なるほど、向こうもそれを知ってるから大技を仕掛けに来たのか」
大技を撃っても当たらなければ意味が無いからな。自分の大技を当てるために、相手の大技に対して合わせに来ているわけか。しかし一瞬で大技の撃ち合いを実行に移すとは……大した判断力を持った奴が向こうに潜んでいるようだな。




