誰か見つけた
「……ある程度戦闘は終了しているのか……?」
「見た感じではそのようだな。しかし、そこまで大規模な戦闘行為を行ったわけではなさそうだ」
オリヴィエの指摘通り、木々がなぎ倒されている光景は幾つか散見されるが、森が跡形も無く吹き飛んでいるだとか、山肌が見える程地面がえぐられているだとかの破壊の痕跡は無いようだ。
「まあ、そんな戦闘が繰り広げられていたらこっちまで何かしらの影響が出てそうだしな」
「この辺りの破壊状況がこの程度で済んでいるのは、圧倒的な火力を持った魔術師がいなかったからか、それともまだ本格的に戦っていないからか……」
「とりあえず、誰か見つけたみたいだね」
そう言いながらミーシャは水晶に映し出された映像の一つを指さす。
「見つけている? どこにいるんだ?」
俺とオリヴィエは映像を注視するが、映像が荒れているのか、人のような姿はどこにも映っていなかった。
「カメラには映っていないかもしれないけど、動きが獲物を発見した時のものになっているね。後はその対象が私達みたいな審査官じゃない事を願うだけだけど……」
映像を見ているだけではわからないが、そういう独特な動きをしているのだろう。上空から撮影されている映像だったが、徐々に高度を下げつつある特定の場所へと近寄ろうとしているのがわかる。
「直線で一気に襲い掛かるわけではないのか……?」
「うん。無差別に襲うようには命令していないからね。何となくイメージ映像は伝わって来るんだけど……視力が違い過ぎるね。もっと近寄って貰わないと判断がつかない」
視覚を共有しているのか……? 何にしても、その情報を元にモンスターと同じ判断を下す事は出来ない様子だ。……まあ、あれだけトンボに酷似したモンスターなのだ。恐らく複眼から得られた視覚情報が脳裏によぎっているのだろう。だとすれば情報の処理が上手く行かないのも無理はない。人間の脳が複眼で得た視覚情報を正確に処理出来るわけがないのだからな。




