技術的問題
「鉱山そのものを手元にまで転送させて採掘するって事か……? とんでもない事をする奴もいたものだな」
「まあ、そんな大規模な転送魔法を起動させるだけの魔法陣や魔力なんてそうそう賄えるものでもないから一瞬で廃れたがな」
「そういうものなのか……?」
「ああ。そもそも現代において建物やインフラ……要するに人工物の転送を前提に研究が進められている理由が形状を画一化しやすいからに他ならない。仮にアメーバ状に広がっている三次元空間を転送させるとなると、どうしたって余計な空間まで一緒に転送せざるを得ないからな。そんな魔力の無駄使いなんてやったら破産するし、かと言って無駄を無くそうとすれば緻密な計測が必要になるし、魔法陣も複雑化する」
なるほどな。最初から転送させる物体の形状と大きさがわかっているなら、何かと合理的なわけだ。
「人工物なら、計測なんてしなくても事前に大きさも形状もわかっているから問題無いってわけか」
「設計図通りに作ってあるならな。実際は熱膨張だとか老朽化だとかで変形するから大きければ大きい程難易度は跳ね上がるとされている」
熱膨張か……確かに物理的に歪みは出るだろうな。
「転送魔法の技術ってより、建築の技術問題に直面しているわけか」
「ああ。そのためどうしても小規模な転送を繰り返して都市の区画を転送させて組み立てて行くというやり方になってしまっている。簡単に言えば完成した模型を運ぶ事は結局出来ず仕舞いで、パーツ一つ一つを送って現地で組み立てるという方式だ。時間も手間もかかるし、転送のコストもかかる」
「同じ体積なら、小さく何度もよりも、大きく一回で転送させた方が効率が良いのか?」
「そりゃそうだろう。手紙だって要件は一つにまとめて送った方が封筒も便箋も無駄にならずに済むだろう? 限度はあるが、大規模な方が魔力の消費量は相対的に抑えられる傾向にあるんだ」
二倍の大きさなら消費量二倍って事にはならないわけか。……まあ、極論を言えば、じゃあナノ単位の転送なら消費量はほぼゼロで転送出来るのか? って話になってくるからな……そういうわけじゃないなら、何かしら最も効率の良い大きさというサイズ感があるのだろう。




