魔術科一組の存在理由
「殆ど独学って……じゃあ、何のためにあるんだ? あのクラス……」
「一般的な学生の範疇を遥かに超えた領分……まあ、要するに専門職レベルの研究だな。ミーシャで言えば、研究対象レベルのモンスターの召喚か、もしくはミーシャ自身が論文を書くとかそういう感じだ」
完全に学生の領分を超えた事をするのが前提の学科なのか。
「じゃあ、もしもお前がそのクラスに入ってたとしたら……」
「まあ、そもそも私じゃ条件を満たしているか怪しいが……仮にあのクラスに入ったとしたら、在学中の目標は大規模な転送魔法の発動だとか、もしくは新しい系統の魔法の構築だとか、そういうものを目指す事になるだろうな。現実的に考えたら大規模転送を目指すのがまだ現実的か……」
「大規模転送って言うと……建物を転送するとかか……?」
「いや、そういう物理的に大きいとかそういうレベルの話ではなく、端的に言ってしまえば、村一つをインフラ丸ごと転送させるとか、そういうレベルのものだ」
「インフラって……上下水道だとか交通網だとかをワープさせるって事か……!? いやいや……無理だろそれ?」
つまり、要するに村をワープさせて、ワープさせたら即座に水道が使用可能になっているって話だろ? そんな事が出来るわけがない。
「いや。無理ではない。理論上は可能だとされている」
「いや無理だろ常識的に考えて。下水道とかどうやって繋げるんだよ?」
「繋げるのではなく、繋がるように転送させるのだ。配管の位置を事前に調べ、それに合うように都市を建築する。後はそのデザインされた都市をそのまま転送させて各種インフラを接続させるわけだ。パズルのピースをはめるようにな」
そんなパソコンのメモリ増設じゃねえんだから……下水道の配管の位置が少しでもズレてたら修正にいったいどれだけの金がかかるかもわからないんだぞ?
「……まあ、理論上は可能かもしれないが……ミスったら国家予算が飛ぶよな?」
「飛ぶな。間違いなく。だから誰もやった事が無い。開拓時代に提唱された理論なのだが……ワープした先の安全性の確保の問題や、ワープして空白地帯となった土地の再開発の難しさなどの問題から仮に成功したとしても割りに合わないと言われている。一応、用途の一つとして王都の遷都……つまり、戦争等の有事の際に都を放棄するのではなく、都ごと別の土地に移してしまおうという目的で研究が行われている」
侵略から逃れるために土地そのものを別の場所に逃がすって事かよ……確かに焦土作戦をするよりはマシ……なのか……? 発想がぶっ飛び過ぎてて理解が追い付かんな。




