縮小は選べない
「軍事力を拡大すると財政が悪化して、縮小すると今度は内政が不安定化する。どっちに転んでも国としては頭を抱える事になるだろうな」
「消去法で軍縮を選べない以上、帝国に出来る方法はたかが知れて来る。つまり、軍拡した上で財政難を克服する。……まあ、ぶっちゃけ言えば軍隊で金を稼ぐか、金を稼げる何かを獲得するか。これしか選択肢は残らない」
理想は金そのものではなく、金を稼げる何かを手に入れる事だ。要するに資本だ。軍事力で土地を手に入れる事が出来れば、財政は一気に改善するだろう。
「卵が先か鶏が先か……と言ったところか。軍拡と侵略を繰り返す事でしか発展が出来なくなるわけだな」
「最適なバランスで維持出来れば問題は無いのだが……そのバランスは周辺国家の行動次第ですぐにひっくり返る。まあ、自国民相手ですら不安定化するのに、ましてや他の国がそんなに信用出来るかと言われたら……無理な話だろうな」
結局のところは、内外共に力で抑えつけられなければ崩壊する構造になっているわけだ。
「無理だろうな。そもそも隣同士で圧倒的な戦力差があったら逆らえるわけがないのだから他の国だって軍拡を進めるしかなくなる」
「そうやって最後は激突し合ってしまうわけだ。勝ち続ける限りは問題無いが、負けでもしたら財政は確実に破綻する」
「そこまで行けば、属国だった国もどんどん離反していく事になるだろうな」
「最悪のパターンは独立だな。もしこれが成功すれば、帝国は国土を失うだけにはとどまらず、他のところにまで伝播しかねない」
一か所でも独立が成立すれば、後は堰を切ったように国はバラバラになっていく。武力で周囲を従えて来た国にとって、武力は国の根幹にかかわる部分だ。他の国だって、帝国が強い国だから従っているのであって、強くないのであれば従う理由は無い。そして、複数個所で同時に革命が起これば、戦力を分散させる必要が出て来るし、分散させればさせる程、革命の成功率は高くなる。そして一か所でも成功すれば後は連鎖反応だ。