望ましい破綻
「とりあえず正しいという前提でって言うがな……一つでも矛盾点が出てきたら破綻する理論って事だろ? ……その場合は新しい理論体系を考えれば良いって話になるのか」
今現在の時点で特に矛盾点が生じていないって事は、逆に言えば矛盾点を指摘出来れば世紀の大発見って事になるからな。
「そうだね。たとえ既存の理論が破綻したと言っても、その理論が今まで通用していたって事実は変わらないからね。そういったところから正しい理論が導き出せるのだとしたら……望ましい破綻だって言えるかもね」
望ましい破綻……スクラップアンドビルドって奴か。
「その望みが叶う日は……まだまだ来ないんだろうな。思考を伴わないから何らかの法則に従って合理的に活動しているって発想それ自体がどこまで正しいのかわかったものじゃないからな」
「そんなのを疑ってたら何も考えられなくなるからそこは仕方ないでしょ」
まあ、そこからして間違っているならもはや考える事そのものがナンセンスなものに成り下がるだろうからな。
「まあな。だが、これが出来れば何かわかるかもしれない……みたいな実験だったりもあるんだろ?」
「まあ、出来ればの話で良いならね。その出来ないにだってちゃんとした理由が存在するから、出来るようになるのはまだまだ先の話だけど」
まあ、そもそもサンプルがないみたいな本当にどうしようもない問題だってあるだろうからな。
「最悪なのはその実験がそもそも絶対に成立しない……なんて事もありえるわけだな?」
「そういう事もありえるだろうね。実験が上手くいかないのは技術的な問題じゃ無くて理論上成り立たないから……だとか、そういうのがね」
物体が光より速く動ければ過去に遡るみたいな話か。そんなものは確認の取りようが無いし、そもそも光より速くなるって事そのものがあり得ないって事も考えられるからな。




