恐らく正しいとされる仮説
「まあね。知能の高い種族……意思疎通の取れる……それこそ人間同士ならすぐに召喚魔法の大まかな概要を知れるからね」
「人間を召喚する事で術の仕様を確認したのか。とんでもない事をしたものだな」
「結局それが一番楽で確実なんだから仕方ないよ。知能が高い分には特に問題無く順調に研究は進んでいったみたいだけど……知能が低くなるにつれて未解明な部分が出て来始めたんだよね。情報を聞き出せないんだから当然だよね」
まあ、召喚する側とされる側とで言葉を交わせればすぐに情報は集まるだろうが、言葉が通じないとなると一気に難易度は跳ね上がる。……が、それでも召喚されるモンスターが意思を持っていればまだ推察する事は可能だろう。もっと不味いのは微生物のようなもはや思考を持たないような生物群だ。ここまで来ると意思を持たないせいで情報を聞き出す事は不可能。実験の結果から仮説を立てて、その仮説を立証するために実験を繰り返すほかない。
「極論、植物だとかを召喚しようものならどういう原理が働いてるのか聞き出すなんて不可能だからな……と、言うか、思考しない生物って召喚可能なのか? 確か召喚には拒否権があるんだよな? 思考しないんじゃ権利の行使も出来ないし召喚出来ないんじゃないのか?」
「召喚魔法の大難問だね。未だに解明されてない現象で、植物は太陽光の差す方向へ向かって成長するのと同じように、何かの法則に従って反応しているだけって仮説で成り立ってるよ」
「成り立ってるって……仮説なのに成り立ってるのか?」
「うん。とりあえず正しいという前提で理論展開して、今のところ特に矛盾無く研究は進んでいるね」
……恐らく正しいが、何らかの理由で正しさを証明する事が出来ないでいる状態なわけか。……まあ、分子は二つの原子がくっついた状態で存在して、分子一つが最小単位で、原子一つだけが存在する事は出来ないなんて理論、恐らく正しいだろうと考える事は出来ても実際に正しさを証明するとなるとかなり難しい話になるからな。




