召喚に応じる条件
「女王アリのポジションがいないって事か。だが、不特定多数の個体を召喚出来るって事はそれに準ずる何かがいるって事だよな?」
「まあね。現時点ではまだ仮説の段階だけど、上位存在ではなくて自分自身が各々の裁量で決めている可能性が高いと言われているね」
「……こいつらが自分の意思で召喚に応じていて、お前の命令に従ってるって事か? 一匹一匹が?」
にわかには信じがたい仮説だな……もっと人知の及ばない何かの介入があるようにしか思えない。
「うん。その根拠になるのが、召喚や使役の条件が不定期的に変わる事があるんだよね。正確には同じ条件でも召喚に応じてくれる時と応じてくれない時があると言った方が良いかな」
「それ……かなり不便じゃないか? そもそも拒否されたら魔法はどうなるんだ?」
「その場合は他の個体に召喚が発動して、いずれかの個体が応じたら召喚は成り立つね。全ての個体から召喚を拒否されたら不発になるよ」
召喚するための条件があるのに、その条件じゃ召喚に応じない場合があるのか……まるで意味がわからんな。
「予め決められた条件で召喚しても誰も応じないってどういう状況だよ……?」
「色々考えられるね。例えば種が絶滅寸前とか」
「絶滅って……まあ、確かに個体数の絶対数が少なければ全部の個体から拒否される確率は高くなるか。じゃあ、個体数が十分なら同じ条件で召喚出来るって事だな?」
「だいたいはいずれかの個体が召喚されてくれるね。だけど、特定の個体だけに絞って調べてみると、意外と召喚に応じてくれない事が判明しているの」
召喚に応じないって……それがその時の気分か何かで拒否してるって事なのか?
「そんなのどうやって確認したんだ?」
「簡単だよ。その特定の個体にマーキングして、何度もその個体に対して召喚を行うの。実際には異なる個体が召喚されるって事が何度もあったんだよね」
召喚が別の個体に移ったって事か。
「それがその時の気分と言うか……そういう何かで召喚を拒否して他の個体が召喚されているって説になっているのか」
「本当に上位存在なんてものが存在するなら毎回同じ個体を狙って召喚出来るハズだからね。そういう意味じゃ召喚や使役の条件って言うのはあくまでも目安に過ぎないって話になるね。仕事の求人みたいなものだね」
ちゃんとした条件を提示すれば誰かしらは来てくれるだろうが……それでも誰も来てくれない可能性もあるってわけか。召喚術師も世知辛いな。




