制御は別口
「状況に適してるってのはわかるが、だからと言って虫を洞窟内に放つなよ……」
オリヴィエはミーシャの召喚したモンスターを眺めながら怪訝そうな表情でつぶやく。
「トンボなだけまだマシだろ。これでもっと別の虫だったらかなりキツイ絵面になってたぞ」
「まあ、それはそうだろうな」
「じゃあ、まずはこの子達を外に出すよ」
そう言いながらミーシャはモンスター達を洞窟の入り口にまで誘導する。
「……召喚したモンスターの行動を制御出来るのか……」
それが当然の行動であるかのようにモンスター達を洞窟の入り口にまで移動させているミーシャに対し、オリヴィエは僅かに驚いたような表情を浮かべる。
「普通はコントロール出来ないものなのか? 召喚魔法で呼び出したモンスターって」
「そもそも召喚する魔法にコントロールの性能が備わっていないからな。基本は自由に行動させるか、別途でコントロール手段を揃えておく必要がある」
「自由行動か。そりゃあ確かに密閉空間で召喚魔法なんて使われたくないだろうな」
虫じゃなかったとしても嫌だろうな。部屋の中に生物が突然発生して、しかもそれらが勝手気ままに行動し始めたら。
「ああ。せっかく設置した物が滅茶苦茶に散らかされたら堪ったものではないからな。何かしら知性の高いモンスターを召喚するのだと思っていたから、虫が出て来た時は一瞬だが肝が冷えたぞ」
確かにこんな閉鎖された空間にどんなモンスターを呼び出すにしても、勝手に動かれたら困るというのがあるだろうから、何を考えているのか表情からは全く読み解けない虫が召喚されたのは、オリヴィエからしてみたらホラー以外の何物でもないだろうな。




