考慮しなくて良い可能性
「なるほどな……確かに家族ぐるみでの付き合いというものがあるにしても、年齢の差はどうしようもないな」
「ああ。そういうのは学校を卒業してからだ。……社交界ではその限りでは無いがな」
ある意味では自由に振る舞えるのは学生生活をしている時だけとも言えるわけか。まあ、権力者である以上は自由なのは自由だとは思うが。
「卒業したら毎日が親戚付き合いか。考えたくも無いな」
「そんなものさ」
「なるほどね」
そう言いながら俺は洞窟の入り口の前に立つ。
「なんだ、いよいよ外の様子を見るのか?」
「ああ。さっきまでの話でわかったが、開けた瞬間に狙撃はまず不可能だろ」
「まあ、わかる範囲での参加者を見る限りでは不可能だろうな」
「それもあるが……そもそもそんな事が出来る奴が仮にいるとしたら、そいつは今頃もっと暴れまわっているだろうよ。ここまで潜伏し続けるメリットがあるとしたら、それはお前の持っている百点って事になるが、それだとお前個人を特定している事になる。それが出来て壁越しの精密狙撃が出来ないって事はないだろ流石に」
洞窟の中に隠れている俺達三人を見つける事は出来ても、個人の特定は流石に無理だろう。
「直接的な攻撃は確かに無理かもしれんが、間接的な攻撃ならいくらでも考えられる事はあるぞ? 召喚魔法がその例だ。雑にバラまいて適当に周辺の選手を襲わせれば良い。魔力はリンクされているハズだから、得点になるハズだ」
「それでも入り口を開けた瞬間に即攻撃って事にはならんだろ」
対策不可能な攻撃手段は空間魔法で障壁発生装置を直接破壊される事くらいだからな。その瞬間はオリヴィエの方で反応出来るのであれば、他の破壊方法は遠距離攻撃での破壊……障壁に攻撃を当てまくって魔力切れで機能停止させるのが最もシンプルな方法だろう。しかし、その方法ならこっちの方でも迎撃は可能だ。やられたら困るのは障害物を無視するような攻撃方法だけだからな。極論、こちらの迎撃手段を全て通り抜けて装置のみを破壊されたら手も足も出ないわけだからな。それを考慮しなくて良いのであれば、相手が何か仕掛けて来たとしても、それに対応する猶予はこっちにもあるだろう。




